空白期(無印〜A's)
第二十三話 前
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えてはいけない一線を越えたような気分になる。
「なんでよっ!」
「だって、僕は男だよ」
いくら性別の垣根が低いからといって、一緒に入れるのはやめてほしい。それに、数年後、この事実が発覚したときは火を噴くほど恥ずかしくなるの目に見えているのだから、僕がここで拒否することは、将来のアリサちゃんとの仲を考えれば妥当なのだ。
しかし、現状、そんな考えはアリサちゃんには通用しない。
「いいじゃないっ! ほらっ!」
不意にアリサちゃんが指差した先には一枚の注意書き。
『九歳以上のお子様のご入浴はご遠慮ください』
そんな風にかかれた張り紙。ついでに、男湯のほうは逆に『女の』に書き直されて同様の張り紙が張ってある。この旅館でのボーダーラインは九歳のようだ。
「あたしたちは八歳だから何も問題ないわよ」
そういわれると確かにそうなのだが。しかし、ここで認めるわけにはいかなかった。僕の男としての沽券にかけて。
「でも、僕の誕生日は七月だから、四捨五入すれば、九歳だからやっぱりダメだよ」
僕の年齢は、八歳と十ヶ月。そもそも、十進ではない年月を四捨五入として考えることは間違いなのだが、小学生ならば、こんな屁理屈もありだろう。中学生以上に言えば、笑われること間違いないだろう。いや、そもそも、中学生レベルになれば、一緒に入ろうという思考回路すらなくなるのだから何の問題もない。
一歩も引かない僕とアリサちゃん。どちらかに援軍が来れば問題ないのだろうが、梓さんは微笑ましいものを見るように微笑んでいるし、すずかちゃんはどっちに味方していいのか分からないようにオロオロしているように見える。
そして、援軍は思いもよらない方向からやってきた。
「アリサ、ここは翔太くんの意思を尊重してやってくれないか」
ぽんと僕の肩に置かれる大きな手。見上げてみれば、笑いながらデビットさんが僕の背後に立っていた。僕からしてみれば、想いもよらない援軍だが、有り難いことこの上ない。
「そうじゃないと、私一人で入ることになってしまうよ」
半分、からかっているような口調ながらもデビットさんはそういってくれた。確かにデビットさんが女湯に入る事ができない以上、僕が女湯のほうへ行ってしまえば、デビットさんは一人で温泉に入らなければならないだろう。
さて、アリサちゃんはどんな反応をするかな? と見守っていると、アリサちゃんは、僕とデビットさんを交互に見ながら、明らかに悩んでいた。おそらく、先ほどまでの主張を通したいが、そうするとデビットさんが一人になることを気に病んでいるのだろう。今は、天秤が揺れている状態。どちらかに少しでも衝撃があれば、そちらに振れてしまうだろう。
そして、デビットさんは
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