空白期(無印〜A's)
第二十三話 前
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と疑問を抱いてしまうほどだ。
しかし、そんな僕とは対照的にアリサちゃんやすずかちゃんは平然としている。当然、デビットさんや梓さんもだ。僕以外の誰も彼もが、そこに泊まる事が当たり前という感覚を持っており、危うく僕は旅館に入ろうとしている彼らにおいていかれるところだった。
「ショウっ! 何やってるのよっ! おいてくわよっ!!」
アリサちゃんの叱るような声にようやく我に帰った僕は慌てて、アリサちゃんたちの後を追うのだった。しかも、すずかちゃんに呆然としているところを見られたのか、クスクスと小さく笑われてしまったことに気づき、少しだけ恥ずかしかった。
こういう場所に不慣れな僕としてはアリサちゃんたちの後ろをとことこと着いていくしかなく、デビットさんに先導されるように僕達は温泉旅館の暖簾をくぐった。
外見は立派だが、内装は地味だった。そんなことはなく、外見同様、内装も立派なものである。すべて木製でできており、雰囲気を大事にしているか、旅館の人たちは皆、和服だった。デビットさんが手馴れた手つきで、チェックインカウンターで手続きしている間、僕は外装を見たときと同様、呆然と周りを見渡すしかない。
「お荷物をお持ちします」
内装を見渡している僕に突然、旅館の人が話しかけてきて、思わずビクンっ! と反応してしまった。まさか、話しかけられるとは思っていなかったのだ。しかも、荷物をお持ちしますといわれるとは夢にも思っていなかった。前の世界と合わせてもこんな場所にとまったことがない。泊まったとしても普通の旅館であり、そこは自分の部屋まで荷物を持っていかなければならなかったものだ。もっとも、僕が泊まった事がないだけで、普通の旅館でもそういうサービスがあるのかもしれないが。
そう、サービスなのだろう。だから、僕は慌てることなく荷物を渡せばいいのだろうが、慣れていない僕は、よろしくお願いします、という言葉と共に肩から下げていたボストンバッグを旅館の人に渡した。僕の態度が初々しかったのか、屈んで僕に声をかけてきた旅館の人は、クスクスと微笑ましいものでも見たような笑みを浮かべて、「はい、確かに」という言葉と共に荷物を受け取り、アリサちゃん達の荷物と同じ場所に僕のバッグも持っていく。
「それじゃ、行こうか」
手続きが終わったのだろう。鍵を受け取ったであろうデビットさんが仲居さんの案内を受けて部屋へと向かっていた。
部屋にたどり着いた僕は、また驚くことになる。僕が知っている旅館というのは修学旅行程度が精々だ。十畳程度の部屋に五、六人が寝泊りできる程度の部屋だ。だが、この旅館の部屋は三部屋あった。二部屋はおそらく寝室に相当するのだろう。もう一部屋はテーブルが真ん中においてあることを考えると居間に相当するのだろう。高級
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