空白期(無印〜A's)
第二十三話 前
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?」
興味津々と言った形ですずかちゃんが笑顔で問いかけてくる。しかしながら、その問いに答えられるはずもなかった。まさか、魔法事件に巻き込まれて、ジュエルシード探しながら、誘拐されて、リンチをうけて、助け出されたなんて話せるはずもない。
いや、そもそも、すずかちゃんの方にその話はいっていないのだろうか。少なくとも忍さんは知っているはずだけど。そこらへんを僕は知らない。すずかちゃんへの情報はどうなっているかを知っているのは忍さんだけだ。もっとも、すずかちゃんが知っているとしても、この場にデビットさんや梓さんがいる限り、容易に口に出すことはできないのだが。
「なのはちゃんの手伝いかな」
その答えはあながち間違いともいえないだろう。すずかちゃんやアリサちゃんに今まで言っていた内容と相違ないのだから。少なくとも嘘は言っていない。
「あっ! そういえば、ショウっ! ちゃんと片付いたんでしょうねっ!!」
僕の言葉に反応して割り込んできたのはアリサちゃんだ。すずかちゃんとは逆サイドに座っているアリサちゃんを見てみると、彼女の表情は、怒りというか、それに近い表情に染まっていた。やはり、そもそもゴールデンウィーク前に温泉旅行前の数日で、開いている日があれば、遊びに行こうという誘いをジュエルシードの件で蹴ったのが拙かったのだろうか。
「うん、大丈夫。ちゃんと片付いたよ」
そんなことを考えながら、僕は安心させるようにアリサちゃんに言う。少なくとも事件が片付いていなければ、僕はこの場にはいないのだから。
「そう、ならいいわ」
少しだけ安心したようにほっ、と息を吐くと満足したようにシートの背もたれに体重を預けていた。
「じゃあ、すずかちゃんとアリサちゃんは何をしてたの?」
一応、すずかちゃんの問いに答えた僕だったが、今度は僕の順番だった。幼くても女の子なだけあって、彼女達はお喋りが好きだ。きっと、この長いとも短いともいえる道中、面白く今日までのことを語ってくれるだろう。大丈夫、時間はたっぷりあるはずだから。
僕の思ったとおり、僕が問いかけると同時に彼女達は我先に、堰を切ったように話し始めたが、聖徳太子ではない僕は同時に話を聞くことはできない。だから、順番に、となだめながら、温泉地までの道中、彼女達の話を聞くのだった。
◇ ◇ ◇
車で揺られること数時間。すずかちゃんとアリサちゃんの話もそろそろ尽きようか、という頃、僕達は目的地と思われる温泉宿の前に降り立っていた。その温泉宿は、ほわ〜、と思わず呆然と見上げてしまうほど立派なものだ。昔ながら旅館のような空気を漂わせながら、その在り方は高級感に溢れている建物だった。本当に僕みたいな人間が泊まっていいのだろうか?
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