空白期(無印〜A's)
第二十三話 前
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りと手を振っていた。
そんな姿を微笑ましいな、と思いながらも僕はアリシアちゃんにも手を振って家を後にした。
車へと向かった僕を出迎えてくれたのは、鮫島さんという数ヶ月前までは塾へと送り迎えをしてくれた執事さんと先に乗り込んで待っていたすずかちゃんだった。
僕たちは車の窓越しにおはよう、と先のアリサちゃんのように挨拶を交わす。ゴールデンウィーク中に会えなかった間の積もる話もあるだろうが、その時間は今から温泉地へ向かうまでに十二分にある。だから、今は出発することを優先するべきだった。だから、僕とすずかちゃんはそれ以上、何も言わずに鮫島さんがドアを開けてくれるのを待って、アリサちゃんに先に座るように道を空けた。
「なにやってるのよ? 早く乗りなさいよ」
「え?」
道を空けた僕に対して返ってきた答えは、実に怪訝なものだった。数ヶ月前まで僕たちが車に乗せてもらっている間、常にアリサちゃんの席は真ん中だった。それが規定位置とでもいうように。だから、今回もその例に違わず真ん中にアリサちゃんが来るように道を空けたのだが、意外なことに僕に早く乗るようにというお達しだ。
どうしたのだろうか? という疑問や、どうしようか? という迷いが生まれたが、ここで手間取っている時間もない。先に乗りなさいよ、と目で促すアリサちゃんの後ろには早く乗らないのだろうか? と怪訝に思っているデビットさんと梓さんもいるからだ。
しかも、考えたところで、単なる席順だ。もしかしたら、アリサちゃんも気分で窓際がいい時だってあるのかもしれない。
そんな風に自分を納得させて、僕はすずかちゃんの隣へと乗り込んだ。続いてアリサちゃんが。いつもならそこでドアは閉まるのだが、今日は一回り大きな車だ。後部座席には六人乗れるようになっている。僕たちが座っているシートと目の前の進行方向とは逆向きに座れるシートだ。そこにデビットさんと梓さんが座って、今度は本当にドアが鮫島さんの手によって閉められた。
ドアが閉められた後、少ししてエンジンがかかるような音がしてゆっくりと車は出発する。車は動き出したというのに車内の揺れは驚くほど少なかった。これは、鮫島さんの運転技術がすごいのか、この車がすごいのか。おそらく、両者だとは思うが。
「ショウくん、久しぶりだね」
「うん。そうだね」
僕の右隣から僕の顔を覗き込むようにしながらすずかちゃんが話しかけてきた。もっとも。僕とすずかちゃんが会っていなかったのは、ゴールデンウィーク中の数日でしかない。これを久しぶりというのかは甚だ疑問ではあるのだが、毎日顔を合わせていたのに、突然数日顔を合わせなかったら、確かに久しぶりになるのかもしれない。
「ショウくんは、今日までゴールデンウィークは何やってたの
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