空白期(無印〜A's)
第二十三話 前
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いた。
「君のような子が友人でよかったよ」
「それは恐悦至極です」
相手は、会社をまとめる社長として頂点に立つような大人だ。そんな人から認められて、恐縮しないわけがない。しかも、デビットさんは親父の親会社の社長なのだから。もっとも、そのことをデビットさんは知らないだろうが。このことは知らないほうがいいだろう。細い関係でもあるとしれば、何かしらの問題が発生するかもしれないから。
僕のかしこまったような言い方に、僕達は顔を見合わせて笑った。傍から見れば、いい迷惑だろうが、今は誰もいない。だからこそ、こうやって人目を気にせずに笑う事ができた。
「そういえば、君はサッカーをやっているらしいね」
「ええ、まあ、嗜む程度には」
クラブに入っているわけではない。お遊びだ。だが、それでも主に外で遊ぶときはサッカーだ。だから、興味があるとはいえるかもしれない。テレビでもサッカーの試合はそれなりに面白いとは思うし。マニアというほどに嵌っているわけではないのだが、それなりに話はできると思う。
だが、それでも、デビットさんには嬉しかったのだろう。先ほどよりも笑みを強めて興味津々と言った様子で顔を輝かせていた。
「おおっ! そうか。私もサッカーは好きなのだが、周りに話せる相手がいなくてね」
「そうなんですか。僕でよければ、話し相手になりましょうか?」
それが引き金だったのだろう。僕とデビットさんは、なぜか温泉の湯船に浸かりながらサッカーについて語り始めた。Jリーグについてや、効率的なフォーメーション。前回のワールドカップについてなどのサッカーの話題なら何でもござれ、という感じだ。
しばらく語ってデビットさんは満足したのか、ふぅ、というため息と共に満足げな表情になりながら一言、ポツリと零した。
「やはり男の子はいいな……」
「え?」
「いや、私はどちらかというと息子がよかったのだ。いや、もちろん、アリサは可愛いとは思うが、こういう風に息子と趣味ついて語るのも悪くないと、君と話していてそう思った」
その目はいるはずのない息子へと向けられているのか、慈愛に満ちていた。
なら、作ればいいんじゃないですか? というのは、簡単だ。僕が本当に子どもなら簡単に言っていただろう。だが、そう簡単にいえない理由もある。アリサちゃんの両親はお互いに社長という立場で忙しいはずだ。それにデビットさんが本気で欲しいと思えば、作らない理由はないだろう。お金はあるだろうし。だが、それでも未だにアリサちゃんに妹なり弟なりいないのは、それなりの理由があるのだろう。少なくとも他の家庭に口を出すことはできない。しかしながら、デビットさんの表情は、少しだけ可哀そうな気がした。少なくとも趣味を語り合える同士がいな
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