SAO編
五十八話 終の鐘
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かに、此奴の娯楽で命がけのゲームに付き合わされた事は未だに納得して居ないし、大事な物を無くした事はあった。気付きたくない事にも気付いてしまったりして、正直言えば、辛い時期も無かった訳ではない。
だがそれを考えても、この世界で得た出会いや繋がりは、自分にとっては言葉で言い表す事など出来ないほど大事な物だし、それはこの世界に来なければ決して得るはずのなかった繋がりなのだ。故に、その繋がりを作るきっかけとなった茅場を、リョウコウ個人は怨んで居ない。
しかし……
「つーわけで……」
それはあくまでリョウコウ“個人”の話……
「一発殴らせろや、茅場」
初めに誓った事と個人の感情は話が別だ。
「……何故かな?」
「何故とか質問できる立場か。ほら歯ァ……喰いしばれぇ!!」
それ以上茅場が発言するより前に、鈍い打撃音が天空に響いた。
────
「ふぅ……」
あの後、茅場は結局吹っ飛んでから苦笑して消えた。捨て台詞も残さなかった辺りはまぁ、評価してやっても良いだろう。
「おっ、と……そろそろか」
眼下のアインクラッドはもう殆ど崩れ去り、結局訪れる事が出来なかった七十六層以降も殆どが消えて居る。
残っているのは頂上。茅場が紅玉宮と呼んだ城。それが……ゆっくりと、崩れた。
「さてと……行くか」
何処に行くかなど知りはしないが、口から自然とそんな言葉が出た。
ラスボスである茅場と同時に死亡……相討ちになった俺がリアルに戻れるかどうかは、正直分からない。唯これまでのゲーム感覚で言わせてもらうなら、ラスボスと何らかの要因で相討ちになった場合は大体がゲームオーバーだった。だから、妙な期待はしない方が良いだろう。
と……右腕に、再び鉄の感触がして、袖をまくる。
そこにある純白の腕輪が、今は先程の斬撃を受け止めた事でくっきりとその跡が残したまま光っている。
あの時最後の一瞬だけ、諦めと共に……安堵が浮かんだ。
現実に戻れば、自分は誰かに責められ、糾弾されるかもしれない。そんな不安は、何時でも自分の中にあった。自分ではそこまで恐れて居ないつもりでも、実際は何処かでそうなる事ほんの少し恐れて居たのだ。だから、それから逃げられると、何処かで小さくそう思った時、安堵した自分が居た。
お守りと言われて渡された腕輪が、自分を縛る枷に感じたのはそのためだ。
そこに生きる道を示された事で、敗北による死に逃げる道はその時点では塞がれてしまった。
償うまで逃がしてはくれぬ、自分への手枷のように思えたのだ。
「けど死んじまって……こりゃ腕輪に面目たたねぇな」
いずれにせよ、命を救ってくれた事は事実。最後に腕輪に感謝の気持ちを込めつつ、ひょっとしたら、また腕輪が手錠効果で自分を生かしてリアルに返す
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