SAO編
五十八話 終の鐘
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して、ふと下を見た時だった。
「おっ……とぉ……」
遥か下に、鋼鉄の城があった。
全百層、一層一層の間が100mで有る事を考えると、全高約十キロにも及ぶ巨大な……空に浮かぶ世界。
浮遊城 アインクラッド
「上から拝める日が来っとはな……」
苦笑しながらリョウは一人ごちる。SAOの資料で見た事はあっても、まさか自分が居た世界を外から見る等思いもしなかった。現実でいえば地球を眺める様な物だ。
圧倒的で、荘厳な城。しかし今その浮遊城は、ゆっくりと、下層からバラバラになって崩れていた。
層の一つ一つがはがれおち、遥か下の海に向かって落下して行く。
「削除中……ってとこか?」
「そうだ。どうだね、こうして見ると中々……」
「ま、確かに。滅多に見れねぇ絶景ではあるな」
隣にいつの間にか白衣を着た現実の姿の茅場晶彦が表れ、リョウの問いに答える間にも、浮遊城はまた一つ層を落とす。なかなかどうして、この世界で見た人やモンスターよりも、遥かに現実味のある“死”だと思えた。
「……で?こりゃクリア後の特典映像か何かか?」
「ははは……なに、製作者のコメントとでも思ってくれればいい」
「成程。リアルの俺なら速攻で飛ばすな」
「スキップのボタンが無くてすまないね」
皮肉の応酬の様になっているが、言いつつもリョウと茅場は笑顔だった。互いに何処か通じ合う所のある二人である。もし現実に置いて歳が近かったなら、良い友人になれていたかもしれない。
「何人残った?」
「6203人だ」
「そうか」
不意にリョウが問うた、生き残った人数。否、消えて行った命の数3797人。
その無機質な四ケタの数字の中に、シルバーフラグスや月夜の黒猫団のメンバー。中層で死んでいった者達。誇り高く闘いながら死んでいった者達。……自分が殺した者達の命が含まれている。
「さて、リョウコウ君。どうだったかね私が全てを賭けた世界は」
「すげぇ悪趣味。っとに最悪で最低だったよ」
遠慮することなく、リョウはきっぱりと言い切った。
初めから全てのプレイヤーを絶望の淵に陥れ、人の欲望や狂気、悪意を引き出してしまうゲームシステム。これを悪趣味と言わずして何と言おう。
常に死の恐怖におびえながら生きねばならず、これまで少なくとも生死に関してはぬるま湯で生きて来た人間達をいきなり焦熱地獄に落とすようなやり方。最悪だし、最低だろう。
その答えを聞いて、茅場は特に怒る事も無く、唯薄く笑った。それと言うのも……
「ふ……散々だな」
「あぁ、最低だ。けどまぁ……」
そう言っているリョウ自身の顔が、楽しげな笑顔を見せて居たからである。
「最高に面白かった」
リョウコウは、少なくとも彼個人としては茅場晶彦を怨んでは居ない。
確
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