第四十八話 妖神その六
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公園での楽しみは終わった。それでだった。
牧村は公園からある場所に向かった。そこはだった。
博士と妖怪達はここでも一緒だった。彼等は本屋に入っていた。難波花月の前にある何階もあるその本屋に入ってだ。本を探すのだった。
そしてその中でだ。博士はある本を手に取っていた。その本は。
「歌劇か」
「うむ、ワーグナーじゃ」
日本語の専門書を手にして牧村に応えていた。
「それを読もうと思ってな」
「歌劇にも関心があったのか」
「そちらの論文も書いておってな」
それでだというのである。
「それでこうしてじゃ」
「読むのか」
「ワーグナーの論文は難しい」
博士はぽろりと漏らした。
「しかしそれだけにじゃ」
「書きがいがあるというのか」
「ワーグナーは深い」
博士はこうも話した。
「学べば学ぶ程わかってくるものじゃ」
「そういうものか」
「だからじゃ。今読んでおるのじゃ」
また言う博士だった。
「何冊もな」
「それだけ専門書が多いのか」
「ワーグナーは特に多い」
「そこまでか」
「モーツァルトも多いがな」
「ワーグナーもか」
「とにかく資料にはこと欠かん」
博士は牧村に話していく。
「かえって多過ぎてじゃ」
「どの資料にするか迷う位だな」
「そういうことじゃ。とにかくのう」
困ったようでいてそれでいて嬉しそうな。そんな顔であった。
「ワーグナーの論文は書きがいがあるのじゃ」
「そこまで言えるか」
「君もワーグナーをどうじゃ?」
牧村に対しても勧めてきた。
「よければじゃが」
「そうだな。一度な」
「聴いてみるといい」
「そうさせてもらう。そこまでいいとなるとな」
「何でも一度は聴くものじゃよ」
博士は笑いながら話す。
「クラシックでもロックでも何でものう。聴いてみるものじゃ」
「ロックもか」
「そうじゃ。ほれ、古いがじゃ」
こう前置きしてからの言葉だった。
「プレスリーじゃが」
「エルビス=プレスリーか」
「あれはよいのう」
目を細ませて話す。
「実にな」
「そうした音楽も聴くのか」
「何でも聴くぞ」
実際にそうだというのだった。
「今のアイドルの音楽もじゃ」
「ではAKBもか」
「あれも大好きじゃ」
そういったものもだというのだ。博士の楽しげな話が続く。
「それでじゃがな」
「後でCDも買いに行くか」
「そちらは一人で行く」
今は牧村と妖怪達も一緒だ。だがその時はというのである。
「そうさせてもらう」
「そうか」
「そういうことじゃ。さて」
ここで博士の言葉が一旦切られた。そのうえでだった。
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