第四十八話 妖神その四
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今度は青年がだ。彼等に対して言ってみせた。
「安心しろ。それはない」
「確かなことは言えるのかな」
「どうかな」
「魔神が戦わないと言ってもね」
「ちょっとね」
「だよねえ」
やはり信じようとしない彼等だった。だが青年はその彼等に対してまた言うのだった。彼の顔は真剣なものでありそこに歪んだものはなかった。
「魔神は嘘は言わない」
「うっ、それはね」
「その通りだけれどね」
「誇りが許さないからだよね」
「そうだよね」
「我等魔神は確かに戦うことは好きだ」
それは魔神である青年も認めることだった。
「しかしだ。嘘は言わない」
「じゃあ安心?今は」
「牧村さんと戦わないんだ」
「そうなんだ」
「そうだよ。それにね」
また青年が彼等に話してきた。
「僕達は今ここに来た理由はね」
「何だってんだよ」
「まさかと思うけれど遊びに来たとか?」
「ブランコとか滑り台で」
「それにチューリップを見たいとか」
見れば花壇には赤いチューリップがこれでもかと咲いている。一体何百本あるかさえわからない程だ。その一本一本が実によく手入れされていてそこには愛情さえ感じられる。
そうしたものを見ながらだ。妖怪達も彼等に言うのであった。
「そういうのじゃないよね」
「魔神がね」
「それはないよね」
「絶対にね」
「絶対という言葉は否定されるべきものだな」
青年は無愛想な顔だが確かにこう言った。
「それはな」
「えっ、ということは」
「本当に?」
「お花見に来たんだ」
「魔神が」
「僕は遊びに来たけれどね」
子供はにこにことして話してみせた。
「最近ブランコが好きだから」
「遊びもって」
「それも信じられないけれど」
「だよねえ」
「かなりね」
「やっぱり」
「しかし事実だ」
また言う青年だった。
「俺はこの赤いチューリップ達を見たくて来た。それは事実だ」
「ううん、やっぱり信じられないけれど」
「実際にお花見てるしね」
「じゃあやっぱり本当なんだ」
「そうみたいだね」
妖怪達もここで遂に頷いたのだった。
「まだ全然信じられないけれど」
「魔神なのにそうしたことを楽しむなんてね」
「遊ぶとかお花見るとか」
「僕達じゃあるまいし」
「いや、それは違うな」
だがそのいぶかしむ彼等にだ。博士が言ってきたのだった。
「万物は変わる。その心も然りじゃ」
「だからっていうの?」
「魔神も楽しむことがある」
「そう言うの?博士は」
「ここは」
「左様、わしも驚いているがのう」
博士のこのことは隠さなかった。流石に表情には出してはいないがそれでもだった。実際にそうしたことを言ってみせたのだった。
「かなりな」
「ううん、そうなんだ」
「魔神も
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