第四十七話 神々その十二
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「それだけの人間が集められそしてだ」
「さらに鍛えられていったのね」
「それが武専だった」
こう若奈に話すのだった。
「今はもうないがな」
「それって何時の時代にあった学校なの?」
「戦争前だ」
実在の学校である。だがGHQの指導の中で軍国主義の一環として廃校とされてしまったのだ。このことを残念に思う人もいるかも知れない。
「京都にあった」
「そうだったのね」
「そこの人とも試合をしていたか」
「やっぱり強かったって言ってたわ」
若奈はその曽祖父の話を牧村にするのだった。
「それもかなりね」
「当然だな。あそこはもう伝説だ」
「牧村君も知ってる話なのね」
「ツレに教えてもらった。そういうことが好きな奴にだ」
「格闘マニア?」
「そうなる」
「やっぱりそうなのね」
若奈はその話を聞きながらまた彼に対して言った。
「そういうことが詳しい人もいるのね」
「自分でもしているがな」
「剣道?それとも柔道?」
「いや、空手だ」
そちらだというのである。
「それをしている奴だ」
「じゃあうちの空手部の」
「そうだ、そこにいる」
「ふうん、顔広いんだ」
これは若奈がはじめて知ることだった。
「牧村君って」
「自覚はないが」
「けれど結構お友達いるのね」
今度はこう言う彼女だった。
「よかったわ」
「いいのか」
「だって。牧村君無愛想だから」
それはその喋り方にも出ている。とにかく愛想がないのが彼なのだ。
「だからね」
「心配なのか」
「うん、そうよ」
まさにその通りだと返すのだった。
「してたんだけれどね。よかったわ」
「そうか」
「そうよ。それでね」
「ああ」
「その赤帯だったの、ひいお爺ちゃん」
若奈の曽祖父の話に戻ったのだった。
「もう滅茶苦茶強くて」
「そんなにか」
「八重超えても身体柔らかくて」
「どんな感じだった、それは」
「普通に身体曲げて掌が全部地面に着いたの」
そこまでだというのである。
「他にもね。足の関節も柔らかくて」
「それでは怪我はしなかったな」
「全然ね」
若奈は牧村にこのことも話した。
「やっぱり身体硬いと」
「怪我をしやすいからな」
「特に柔道はそうだからって」
「柔軟をしていたか」
「毎日ね。じっくりとしていたわ」
「それはいいことだな」
素直に賞賛の言葉を出す彼だった。
「俺も柔軟は毎日しているしな」
「朝と夜の二回ね」
「それは忘れない」
「ストレッチは必須よ」
若奈の顔が厳しいものになった。トレーナーの顔だった。
「絶対に忘れないでね」
「怪我をしない為だな」
「そう、身体を柔らかくして温める」
柔らかくするだけではないとも言うのである。
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