SAO編
五十七話 矛と盾
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に“ほんの少し”の反則を許してしまった。
それが《足技》である。
本来、自分では無く相手の十八番であるそのスキルを、一応全てのスキルをマスターさせてあるヒースクリフに、茅場は使わせてしまったのだ。
無論、完全に不意を突いたその奇襲は成功し、聖騎士は勝利する……はずだった。
それが、何故だろう。
完璧な、絶対に防げないはずの一撃は、彼の右手首より少し下、腕の部分の浴衣の生地に食い込んだ所で強制的に停止させられていた。
彼が、何かを呟く。
「これじゃ、枷じゃねぇか」
何を、と思う間もなく、ヒースクリフは再び驚愕した。
彼の今の体勢は、右腕で自分の右腕が持つ剣を受け止め、得物である青龍偃月刀を持った左腕を地面ギリギリの所まで引いている。そしてその偃月刀の刃が、まるで深い森の様な、濃厚な深緑色の光を帯びていたからだ。
反射的に、左腕に持った十字盾を引き戻そうとして、気付く。身体が、動かない。
《スキル硬直》と言う、全てのプレイヤーに平等に与えられる。比較的短く設定してある《神聖剣》であっても、僅かながらには生じる決定的な、隙。
偃月刀が振り上げられ、左腕が、二の腕から切断された。
衝撃で一歩後ろに下がる。タイミング良く硬直が解けたが……些か遅すぎた。
連撃が、始まる。
「阿ァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………!!!」
切り上げ、切り上げ、振り下ろし、切り上げ……
薙刀と言う武器スキルでありながら、有り得ない様な連撃が次から次へと繰り出され、ヒースクリフは残った右手に持った十字剣を使ってそれらを逸らし、或いは回避する。
何が来るかなど分かっている。そもそもあの体勢から放てるスキルは、薙刀の中では一つだけ。
使いこなせる者など居ないと思いつつも、カウンターとしてデザインした、薙刀最強の技の一つ。
薙刀 最上位重連撃技 戦神
再び振り下ろし、突きからの五回転切り。
しかし幾ら何が来るか分かっていたとしても、初めの時点で自分は彼の技の間合いに接近し過ぎて居たのだ。むしろ初めの一撃で切り捨てられなかっただけマシ。
パリィによる硬直も限界。この流れだと最後の一撃は……
『避けられぬだろうな……』
もしかすると、《神聖剣》のスキルを捨て、相手の十八番に頼るなどと言う無粋な手を使った時点で、こうなる事は決まっていたのかもしれない。
自分が負けることなど、想像したことも無かったし、一度も良しとはしなかった。しかし生まれて初めての敗北が、自らの作った世界でならば……
──否──
そう。自らの作った世界だ。
その世界においては、ヒースクリフは最強だった、最強でなければならない。この世界を作り上げ
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