SAO編
五十七話 矛と盾
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来ても自分は本当に“何時も通り”らしい。死がすぐそこにあると言うのに、特に恐怖も感じない辺り特に。
身体も、既に余分な力も全て抜けて居るはずだが、硬直時間のせいで未だに全く動かない。これではやはり回避は不可。
しかし感覚は戻り始めている、力の抜けた身体に触れる浴衣の感触が、胸のあたりから戻ってきている。肩にかかる、冷裂の重み。自分と武具の重みを支える、膝の感覚。
──右腕に付いた、金属質な腕輪の感触。
──これ、俺にとっちゃ嫌味だぞ?──
普段は気にかけずとも、確かにそこにある。
──にへへ……良いの。私はそれの色が好きなんだから──
自分の罪の象徴。
──はぁ……んじゃまぁ、貰っとくか──
純白の……彼女の腕輪。
──あ、外しちゃだめだよ?それは……──
「ったくよぉ……」
──お守りなんだから──
純白の刃が振り下ろされ……リョウの腕が、それを防いだ。
────
ヒースクリフは思う。彼について驚くのは、これで何度目だろうか、と。
この攻撃は、完璧なタイミングだった。
これまで長々と繰り返して来た戦闘は、相手に一撃でも攻撃を命中させれば終わる闘いだ。
故に、もし茅場晶彦がこのゲームをシナリオ通り最後まで果たそうとするのならば、初めからオーバーアシストなりなんなりを使えば済む話だった。それをしなかったのは、彼がそのような理不尽を自らの聖域とも言うべきこの世界に持ち込む無粋を許せなかったからで有り、何より、ヒースクリフとしての自分が、騎士道の欠片も存在しないその行動を真っ向から否定したからである。
3500を超えるプレイヤーを殺害しておいて、何を今更と言う者は勿論居るだろう。全てのスキルの動きが予測できる時点で、既に反則だと言う者も居るだろう。
しかしあくまでSAOと言う世界の中だけにおいては、彼はGMたる茅場晶彦であり、同時に“聖騎士ヒースクリフ”なのだ。
そして戦闘を始め、自身の完全な勝利に曇りが出てからも、彼の騎士たる部分はあくまで《神聖剣》の範囲内で勝つ事にこだわり続けた。当然茅場晶彦も初めはそのつもりだったし、ヒースクリフの邪魔をするつもりなど毛頭なかったため初めは問題無かったのだが……戦闘が長引くにつれ、《神聖剣》の範囲内で彼に勝つことは不可能なのではないかと、茅場晶彦の学者としての論理的思考を持つ部分に無意識下での疑念が生じる。その疑念は彼と打ち合うほどに強くなり、茅場は少々の反則技すら念頭に置き始めてしまった。
無論、無意識下であったそれはヒースクリフの動きを阻害するほどの物では無く、聖騎士としての意識は戦闘に集中し続けたが、膨れ上がった疑念と、何より茅場自身が持つ敗北を良しとしない性格が、ヒースクリフ
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