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SAO─戦士達の物語
SAO編
五十七話 矛と盾
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打ち込んで十発を超えたあたりで初めて隙が出来た時、ヒースクリフが反撃の突きを打ち込んだことで周囲のプレイヤーたちは一様に息をのんだ。が、その後すぐに、その恐怖は驚愕へと変じた。
 針の穴に糸を通すこうな正確さを持ってリョウコウの首元を狙い放たれたヒースクリフの突きを、リョウコウはこの上なく冷静に、“首を捻っただけ”で避けたのだ。続けてソードスキルを使わずに放たれた六発の連撃も、胴を狙えば冷裂の柄で逸らし、肩を狙えば身を捻り、足を狙えば軽いステップで。全ての攻撃を、リョウコウは最小限の動きだけで回避し切った。
 ただそれでも、掠り傷やまともに受けた時に“抜けた”ダメージで多少のHPは減ったが、あくまでヒースクリフと同程度の微量。勝負を決するにはまだまだ遠く、HPゲージは互いに残り20%以下の危険域《レッドゾーン》。
ただ勿論、三発目にヒースクリフが衝撃を逸らしだしてから、下手に打ち込む訳にはいかないと警戒し出したのだろう。決してソードスキルを打つことはせず、ただ己のセンスに従って武器を振る通常攻撃だけで戦っていた。

 冷裂から繰り出される“線”の攻撃を、盾と言う“面”で防御するヒースクリフと、基本的に“点”、稀に“線”で構成された攻撃群を、冷静に観察し、必要最小限の動きでかわし続けるリョウコウ。
互いに一言も発する事は無く、床に転がるプレイヤーたちが見守る中、鉄と鉄がぶつかり合う衝撃音だけを響かせながら、二人の戦いはもう二十分以上平行線を保ち続けて居た。

 そんな停滞した闘いの中で、転機は、突然訪れた。

「…………」
「…………」


 無言で戦う二人の間で、青龍偃月刀が唸りを上げてリョウコウの右斜め下からヒースクリフの盾へと打ち掛かって行く。それを……ヒースクリフは十字盾をリョウコウの攻撃のベクトルと平行に近づけるように防ぐ……“前に出ながら”

「…………!」
 此処に来て、これまで受ける事に終始して来たヒースクリフが前に出て来た事に、リョウコウは不意を突かれ、初めて、ほんの少しだけ眼を見開く。
そしてその不意を突かれた事が隙となり、冷裂は十字盾の正面を掠りながらヒースクリフの右側に抜けてしまう。そこに、ヒースクリフが少し引いた十字剣が美しい黄金色の光を帯び、高速で突き出される。

神聖剣 三連続刺突技 クラージュ・アンジュ

 技が来るであろう軌道を確認しつつ、リョウは全力で回避行動を始めて居た。
先ず一突き。顔面を狙って来たそれを、首を後方に逸らす事で回避。二突き、今度は胴を狙って来た刃を、先程の攻撃の際前に出していた右足を引き戻し、一歩下がる事でギリギリに回避。だが……最後の三突き。

「リョウッ!」
 これはタイミング的に絶対に回避不可能だ。しかし……アスナの悲鳴じみた声が聞こえた様子
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