第四十七話 神々その十
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「わかったな」
「わかったつもりになった。それではだ」
「はい、西瓜ね」
祖母が切ったその西瓜を出してきた。奇麗に三角に切っている。
「まだまだあるから遠慮しなくていいよ」
「美味いな」
牧村は祖母の差し出したその西瓜を受け取って先を一口かじってから述べた。
「しかもよく冷えている」
「冷蔵庫でさっきまで冷やしておいたからね」
「それでか」
「そうだよ、それでだよ」
笑顔で孫に話すのだった。
「それでなんだよ」
「成程な。それで美味いのか」
「西瓜はそのままで甘いんだよ」
祖母はこんな話をしてきた。
「西瓜のままでね」
「塩をかけなくてもか」
「そうだよ。それでも美味しいのが西瓜なんだよ」
「そうだな。確かにな」
牧村は実際に今西瓜に塩をかけていない。それでもだった。
その西瓜は美味かった。確かにだ。その西瓜を食べながらだ。牧村はまた言った。
「美味いものはそのままでもか」
「そういうことだよ」
「ただしだ」
ここで祖父がまた彼に言う。
「美味くなるまでにはそれなりのことが必要だ」
「手入れか」
「そうじゃ。手入れは必要じゃ」
このことを言うのは忘れないのだった。
「それはわかっておるな」
「つまりは。人も同じだな」
「わかっていればよい。それでじゃが」
「わかっている。座禅もしてだな」
「身体だけでなく心も同じなのじゃよ」
「そういうことだな」
「来期はね」
祖母は孫に直接語りかけた。その名前を出してだ。
「昔から身体を鍛えてはいたけれどね」
「心はそうではなかったからな」
「心か」
「そうだ、心の鍛錬はしていなかったな」
ここでは修行という意味である。そうした意味での言葉だった。
「だが身体だけではなくだ」
「心もだな」
「健全な精神は健全な肉体に宿る」
祖父はこの言葉を出した。着ている夏用の和服の袖の中でそうしてだ。
「この言葉の最後はだ」
「それで終わりではなくか」
「かし、という言葉が加わる」
そうだというのであった。
「宿って欲しいという意味だ」
「かし、はそうであってもらいたいという意味でか」
「そうだ、健全な肉体だけでは駄目だ」
「健全な精神もだな」
「それを忘れないことだ」
こう孫に告げる。
「神戸に戻ってもだ。心の鍛錬もだ」
「忘れずにだな」
「そうしていくことだ」
こんな話もするのだった。そしてこのことを若奈にも話す。場所は難波の喫茶店である。その中に入って話をするのだった。
若奈はだ。紅茶を飲みながら話を聞いてだ。まずはこう言った。
「凄いお爺さんね」
「そうか」
「そして凄いお婆さんね」
どちらも凄いというのである。
「本当にね」
「そんなに凄いか」
「今そんなこ
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