第四十七話 神々その九
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「それはしていくがな」
「そうなの。それはね」
「座禅はするか」
「ああ。していく」
こう答える彼だった。
「だが。剣道や薙刀はだ」
「それはしないのね」
「やはりな」
「戦うスタイルが違うからな」
彼がしない理由はそれだった。だから剣道は積極的にしないというのだ。
それでだ。彼はまた言った。
「剣道や薙刀はフェシングとは全く違うからな」
「それは当然だ」
祖父が彼に答えた。
「当然のことだ」
「そもそも文化も文明も違うしね」
祖母も言ってきた。
「だからそれはね」
「全く違って当然か」
「それでか」
祖父母の話を聞いてだ。彼も納得した顔で頷いた。
そのうえでだ。彼は言うのだった。
「ではそれではか」
「そうだ。だが座禅をするのならだ」
祖父はその座禅のことを話した。
「それは御前にとっていいことだ」
「いいことか」
「座禅はただ座るだけではない」
それだけではないというのだ。
「そこから無限を感じ無我の中に入る」
「無我か」
「そこから感じ取っていく。いいな」
「続けていく」
これが彼の返答だった。
「そうしてな」
「そうしたらいいわ」
こう言う祖母だった。
「是非ね。そうしなさい」
「わかった」
「きっといいことになっていくから」
「少なくともいいことは既にあった」
牧村は魔物になろうとしながら人間に留まれたことを思い出していた。座禅もまたそうなった一つだとだ。このことを思い出したのである。
「そしてこれからもだな」
「これからもね。その通りよ」
「座禅の中にはないものもある」
祖父が不意に言った。
「それは何だと思う」
「ないものか」
「そうだ。それは何だ」
「何かだな」
「そうだ。何だと思うのだ」
こう牧村に対して話すのだった。
「それはだ、何だ」
「わからない」
まだだ。牧村はこのことはわからなかった。
そうしてだ。彼はいぶかしむ顔で言った。
「それはだ」
「そうか。まだわからないか」
「これからもどうなるかわからない」
こうも言う牧村だった。
「だが。わかるか」
「わかるかも知れない」
祖父も今は断言しなかった。あえてこう言ったのである。
「それはだ」
「わからないのか」
「そのことはわからない」
こう表現して孫に伝えた。
「そうとしか言えない」
「そうか」
「未来は誰にもわからんさ」
「そうだな、それはだな」
「そういうことだ」
孫に言う言葉はこれだった。
「それでだ。やることはだ」
「それでも生きるか」
「そうだ、先に進め」
また孫に告げた。
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