SAO編
五十六話 骸骨の刈り手と
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ろ」
「感謝なんかいらねぇよ!いらねぇから……命なんか賭けないでくれ!!俺は……それじゃ兄貴が命賭けて……それで……!」
それで兄貴が死んだら俺はどうすればいい?
そんな事を、キリトが口に出来る訳は無い。
常に共に居た存在が。キリトにとっては、自分の隣に或いは前に居て、自分を引っ張ってくれた、自分にとって目標の一つであり、ある意味憧れだった。
その存在が、自分が起こした軽率な行動の結果を受けて命を失おうとしている。
それにキリトが耐えられる道理は無く、アスナですら、今にも泣き出しそうなキリトの隣で、ただ涙を流すしか出来ない。
だが……
「はぁ?何勘違いしてんだバーカ」
「な、ば、馬鹿って……!」
彼の兄は、何処までも飄々としていて、いつも通りだった。
「てめぇ如きのせいで誰が命かけるか阿呆。つか、俺はデュエルするってしか言ってねェよ。死ぬとか、早とちり過ぎだっつーの」
「な…………」
だからそのデュエルが危険だと言っている訳だが、そんなことはこの男にとってはお構いなしらしい。
顔を上げてみれば、その背中は自信に満ちて居て、自分の未来を微塵も疑っていない。
「ようは勝ちゃー良いんだよ勝ちゃ……ま、良いから黙って見てろ。さっさと勝って、家に帰るぞ」
「だから……!あぁもう!話し聞けよ!馬鹿兄貴!」
「馬鹿兄貴上等!さーて……」
最早全くキリトの言葉を聞いていない明るい声は、それが最後だった。
否、むしろ声の持つ明るさはそのままだ。唯その言葉に乗る感情が、優しさから殺意のそれに変化しただけの事。
「やろうか……?聖騎士さんよ?」
冷裂を振り回し、腕を少し曲げ気味に下げ、決先をヒースクリフに向けて構える。
呼応するように、ヒースクリフはメニューを操作する。
彼の頭上に不死属性解除のメッセージを表示され。十字盾を身体の前に出し、その後ろで構えた剣の切っ先をリョウへと向ける。
HPは互いに同じ。レッドゾーンぎりぎりの、強攻撃一撃のヒットで勝負が決まる量。
「…………」
「吸うううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ吐あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
過剰なほどの深呼吸。
見ようによっては静かにすら見えるそれが、この世界の命運を賭けた闘いの、始まりの合図だった。
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