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SAO─戦士達の物語
SAO編
五十六話 骸骨の刈り手と
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この勝負は、決して公平さの保障された勝負等では無い。
たとえヒースクリフが何の約束をしたとしても、それはあくまで口先の話だ。いざとなれば、彼はすぐにGMの権限によってリョウを消し去ることができるのだから。
その程度の事は、リョウとて分かっている。しかしそうだとしても、この場でリョウは引きたくない理由があった。

「まぁ言いてぇ事は分かるがよ……けど、すぐ目の前にログアウトが転がってんのに、逃げる訳にゃいかねぇだろ」

 ログアウト
 それが意味するのは、この世界の住人全員がこの世界から脱出すると言う事。
ほぼ全てのプレイヤーの悲願であり、一部のプレイヤーにとっては目指すべき目的。
それが、目の前にある。ただ一度のデュエルに勝つだけで、手に入る。それは、リョウにとって余りにも魅力的な申し出だ。
今自分が勝つだけで、自分はこの危険だらけの世界から脱出できる。
エギルも、リズも、シリカも、アスナもキリトも……サチも、これから訪れるであろう命の危険から少しでも離れる事が出来る。

『んなもん、受ける以外の選択肢があっかよ』
 リョウは、キリトとアスナからは見えない位置で、ヒースクリフと向き合いながら、苦笑した。

『それに……』
「……キリト、先言っとくぞ。……ありがとよ」
「な……に言って……」
「お前のおかげで、やっと少しばっかし償いってのが出来そうだ」
 これまで、第七層以降に消えて行った全てのプレイヤー達。その全ての命に関して、リョウは実質茅場晶彦と同罪だ。
知っていたのに、言わなかった。

 言っていれば。誰かに伝えて居れば、何かが変わったのかもしれない。

 シルバーフラグスのメンバーは、タイタンズハンドに殺されずに済んだかもしれない。
 25層や、50層のボス戦での、多くの犠牲は出なかったかもしれない。
 ラフコフに、殺されずに済んだ人々が居たかも知れない。
 月夜の黒猫団は、全滅せずに済んだかもしれない。
 アスナは、必要以上に悪夢を見ずに済んだかもしれない。
 キリトは、黒猫団の事で苦しまずに済んだかもしれない。
 サチは……泣かずに済んだかもしれない。

 その全ての不幸は、茅場晶彦の責任であると同時に、リョウコウの背負うべき罪だ。
何も出来なかった。否。しなかった。
2000近い命の、その重み。ビーターとして、キリト達βテスターが背負ったものとは、根本的に質が違う。本当の意味で、このデスゲームを“止められたかもしれなかった”にもかかわらず、それをしなかった者の罪。

「違う……!俺は!……おれは……兄貴に、そんな……!」
「わあってるっつの。償いだとか何とか、そんなんは俺が勝手に持ち込んだ闘う理由みてぇなもんだ。……けどな。チャンスを作ってくれた事くれぇは、感謝させ
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