SAO編
五十六話 骸骨の刈り手と
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
この勝負は、決して公平さの保障された勝負等では無い。
たとえヒースクリフが何の約束をしたとしても、それはあくまで口先の話だ。いざとなれば、彼はすぐにGMの権限によってリョウを消し去ることができるのだから。
その程度の事は、リョウとて分かっている。しかしそうだとしても、この場でリョウは引きたくない理由があった。
「まぁ言いてぇ事は分かるがよ……けど、すぐ目の前にログアウトが転がってんのに、逃げる訳にゃいかねぇだろ」
ログアウト
それが意味するのは、この世界の住人全員がこの世界から脱出すると言う事。
ほぼ全てのプレイヤーの悲願であり、一部のプレイヤーにとっては目指すべき目的。
それが、目の前にある。ただ一度のデュエルに勝つだけで、手に入る。それは、リョウにとって余りにも魅力的な申し出だ。
今自分が勝つだけで、自分はこの危険だらけの世界から脱出できる。
エギルも、リズも、シリカも、アスナもキリトも……サチも、これから訪れるであろう命の危険から少しでも離れる事が出来る。
『んなもん、受ける以外の選択肢があっかよ』
リョウは、キリトとアスナからは見えない位置で、ヒースクリフと向き合いながら、苦笑した。
『それに……』
「……キリト、先言っとくぞ。……ありがとよ」
「な……に言って……」
「お前のおかげで、やっと少しばっかし償いってのが出来そうだ」
これまで、第七層以降に消えて行った全てのプレイヤー達。その全ての命に関して、リョウは実質茅場晶彦と同罪だ。
知っていたのに、言わなかった。
言っていれば。誰かに伝えて居れば、何かが変わったのかもしれない。
シルバーフラグスのメンバーは、タイタンズハンドに殺されずに済んだかもしれない。
25層や、50層のボス戦での、多くの犠牲は出なかったかもしれない。
ラフコフに、殺されずに済んだ人々が居たかも知れない。
月夜の黒猫団は、全滅せずに済んだかもしれない。
アスナは、必要以上に悪夢を見ずに済んだかもしれない。
キリトは、黒猫団の事で苦しまずに済んだかもしれない。
サチは……泣かずに済んだかもしれない。
その全ての不幸は、茅場晶彦の責任であると同時に、リョウコウの背負うべき罪だ。
何も出来なかった。否。しなかった。
2000近い命の、その重み。ビーターとして、キリト達βテスターが背負ったものとは、根本的に質が違う。本当の意味で、このデスゲームを“止められたかもしれなかった”にもかかわらず、それをしなかった者の罪。
「違う……!俺は!……おれは……兄貴に、そんな……!」
「わあってるっつの。償いだとか何とか、そんなんは俺が勝手に持ち込んだ闘う理由みてぇなもんだ。……けどな。チャンスを作ってくれた事くれぇは、感謝させ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ