第四十七話 神々その三
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「食べて力をつけて」
「栄養を摂って」
妖怪達はさらに話していく。
「それからね」
「戦いに勝たないとね」
「勝つ為にか」
ここでだ。牧村の言葉に強いものが宿った。そうしてだった。
彼はこう返すのだった。
「俺はだ」
「俺は?」
「どうしたの?」
「俺は生きる」
これが彼の言葉だった。
「勝つ以上にだ。生きる」
「そうするんだね」
「勝つんじゃなくて生きる」
「そうするんだ」
「人間として生きる」
そうするというのである。
「それでは駄目か」
「いいと思うよ」
「そうだよね」
「それもね。人間として生きるのもね」
「いいんじゃないかな」
妖怪達は彼のその言葉を否定しなかった。
「っていうか牧村さん人間だし」
「そうそう、人間だからね」
「それだったらね」
「そういう考えもいいよね」
「確かにね」
「そうか」
牧村も妖怪達の言葉を受けてだ。まずはこう呟いた。
そしてそれからだ。こう言うのだった。
「勝つことよりも生きることを考えていいのか」
「はい、それでいいんですよ」
ろく子の首が延びてきてだ。彼に話してきた。その知的な美貌をたたえた顔をにこにことさせてだ。そのうえで彼に話してくるのだった。
「勝つことよりもです」
「勝つことよりもか」
「生きる方が大変ですから」
「生きる方がか」
「はい、私はそう思います」
こう話してだ。また牧村に言うのだった。首を延ばしたままでだ。
「勝っても死んだりするじゃないですか」
「特攻か」
「極端な例はそれですね」
「あの様にか」
「勝つには命を賭ければそれでできる場合もあります」
「しかし生きるのはか」
「そうはいきません」
こう話してだ。その理由も話すろく子だった。
「負けて生きることもできますよね」
「それはな」
「撤退すればいいんですし」
「しかしその撤退もだ」
「とても難しいですよね」
ここで博士も加わるのだった。うどんを食べながら。
「戦争で一番難しいのは撤退じゃよ」
「よく言われる話ですね」
「戦国時代では殿を無事務められる者こそが最高じゃった」
博士はその話もした。
「まさにそれこそがだ」
「そうそう、本多平八郎ね」
「あれは凄かったよね」
妖怪達はこの武人の話をする。徳川四天王の一人と言われ恐ろしいまでの武勲を重ねていった者である。その強さは伝説にまでなっている。
「武田に攻められて後ろを持ってもね」
「怪我一つせずに軍を退かせたからね」
「いや、退き佐久間や逃げ弾正も凄かったけれど」
「あの人は別格だったよね」
「全くだよ」
「そういうことです」
ここでまた牧村に言うろく子だった。
「撤退は生きてこそですね」
「ああ」
牧村も目
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