第四十六話 形変その六
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「ガムもあるし」
「そうか。それならだ」
「ええ、行ってらっしゃい」
若奈はそのガムを出しながら告げた。
「それじゃあね」
「ああ、それではな」
こう話してだった。牧村は席を後にした。そうして暗い通路を通ってそうして映画館のロビーに出た。そこに老人がいたのであった。
老人はだ。いつもの穏やかな笑みで彼に言ってきた。
「まずはです」
「ここで戦うつもりか」
「いえ、そのつもりはありません」
老人はそれは否定した。
「それどころか今戦うつもりはです」
「それもないのか」
「ありません。何故なら」
「妖魔がいるからか」
牧村はすぐに言った。
「だからだな」
「おわかりなのですね」
「すぐにわかることだ」
また答えた彼だった。
「妖魔は貴様等にとっても敵か」
「はい」
老人は率直な声で答えてきた。
「その通りです」
「破壊と混沌は望んでいないのか」
「私達が望んでいるのは戦いだけです」
「それだけか」
「他のことは望んでいません」
「俺や死神との戦い以外にはか」
「何故破壊や混沌が楽しいのでしょうか」
老人はこうも言った。
「私にはそうしたものは。私達自体がですが」
「興味がないか」
「混沌と秩序を相反するものとすれば」
老人はここから話した。
「私達は秩序の世界にいます」
「そちらにか」
「そして破壊も望んではいません」
それもだというのだ。
「望むのは戦いだけです。むしろこの世をです」
「この世をか」
「楽しんでいます」
屈託のない笑みになっての言葉だった。
「それも存分に」
「妖魔達はこの世自体を破壊しようとしている」
「だとすれば我々はです」
「その妖魔達と敵対するか」
「その通りです。おそらくは」
老人はふと話を変えてさらに語ってきた。
「彼等は私達にも手を及ぼしてくるでしょう」
「そして戦うか」
「戦いは望むところです」
老人の顔が笑った。そのうえでの言葉だった。
「それはです」
「そうか」
「貴方や死神と戦えないのは幾分残念ですが」
「しかしそれどころではないというのだな」
「今は。仕方がありません」
諦めた口調そのものだった。
「でsから」
「わかった。それではだ」
「貴方もそれでいいですね」
「いい」
また言った彼だった。
「今は妖魔をだな」
「それではそういうことで」
「休戦か」
牧村は言った。
「そういうことになったか」
「同胞達には私から伝えておきます」
老人からの言葉だった。
「では。そういうことで」
「そうか。これで帰るのか」
「私の用件はこれで終わりです」
老人からの言葉だった。
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