第四十六話 形変その五
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「何故そうなる」
「だから妹だから」
「それはならない」
「あら、冷たいのね」
「ただでそうなるものか」
「何言ってるのよ。私もお店に入るんじゃない」
「御前もだというのか」
「そうよ。ウェイトレスとしてね」
完全に決まっているかのような口調で兄に話す彼女だった。
「もうそれはね」
「決まっているというのだな」
「そういうこと。それでいいわよね」
「誰が決めた。そんなこと」
「マスター」
彼だというのである。
「マスターは快諾してくれたわよ」
「中学生相手にか」
「そんな筈ないでしょ。高校に入ってからよ」
「その時からか」
「高校に入っても部活はするけれど」
この場合は体操部だ。未久は今も部活に熱中している。それは高校になってからも変えるつもりは一切ないというのである。
「それでもね。時間が空いてる時にね」
「アルバイトをするのか」
「そういうこと」
そうだと話すのだった。
「それでね。お店の人にもなって」
「半額か」
「いいわよね、それで」
「全く。要領がいいな」
「妹だからね」
「それで要領がよくなるのか」
「なるわよ。二番目の子は大体そうなるじゃない」
こんなことも話す彼女だった。
「それでなのよ」
「そうなるものなのか」
「お兄ちゃんにはわからないわよ。それじゃあね」
「ああ」
「九月ね、お家に帰ってくるの」
話はそこに戻っていた。
「その時よね」
「そうだ、その時だ」
「わかったわ。じゃあ待ってるからね」
こう話してだった。朝の兄妹の会話は終わった。夏休みの終わりの時だった。
それが終わるとすぐにトレーニングに出た牧村だった。それが終わってからだ。
昼食は屋敷で食べた。そうしてである。
若奈と映画館に行った。難波の映画館である。
そこで今流行のアメリカからの映画を観る。だがその時にだ。
不意に後ろの席からだ。こう言ってきたのだった。
「久し振りですね」
あの声だった。こう彼に言ってきたのである。
「それでなのですが。お話をしませんか」
「・・・・・・・・・」
牧村が応えなくともだ。声はさらに言ってきた。
「場所は用意していますのね」
「・・・・・・・・・」
牧村はやはり応えない。だがその代わりに無言で席を立ったのだった。
その彼にだ。若奈が尋ねた。
「何処に行くの?」
「コーヒーを飲んでくる」
こう彼女に言った。
「少しな」
「そうなの、コーヒーなの」
「暫く飲んでくる」
「そんなに眠い?」
「少しな」
「ううん、この映画面白いけれど」
若奈は前の大画面を観ながら彼に話す。彼女も目が少しとろんとなっている。
「どうもね」
「眠いか」
「どういう訳か。寝不足かしら」
「そう
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