第四十六話 形変その四
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「あの店の話か」
「それはどうするのよ」
「店は入る」
それは絶対だというのだった。
「店はだ。入る」
「じゃあトレーニングは」
「ランニングは続ける」
「それはなの」
「そうだ、それは続ける」
そしてだった。こうも話した。
「ただ」
「フェシングやテニスよね」
「それはだ」
「止めるの?やっぱり」
「大学までだ」
そこまでだというのだった。
「そうだな。天使でなくなれば」
「天使って?」
「いや」
妹の声に気付いてだった。すぐに己の言葉を一旦止めた。そうしてそのうえでこう返した。
「何でもない」
「そうなの」
「そうだ。大学までだ」
話はここで終わらせてだった。また妹に話す。
「大学が終われば。フェシングやテニスはしない」
「ランニングだけなの」
「その他はしない」
「そうなのね。スポーツする時間は減るのね」
「店の方に専念することになるな」
「頑張ってね。それで」
妹の顔が急ににこにことなってだ。こんなことを言ってきたのだった。
「美味しいスイーツ御願いね」
「御前にか」
「できるだけ毎日来てあげるから」
そうだというのである。
「だから美味しいの御願いね」
「随分都合のいい話だな」
「それでね」
「今度は何だ」
「お金は定額より半額よね」
「何故そうなる」
「だって妹じゃない」
そこを根拠にするのだった。
「そうでしょ?それだったら」
「妹だからか」
「そうよ、妹だからそれもいいじゃない」
「俺にそんなことを決める権利はない」
「ないの?」
「ある筈がない」
「お兄ちゃんが次期マスターなのに」
そのマジックのマスターだというのである。
「それでもなの」
「何故あると思える」
「だって。若奈さんのお婿さんになるじゃない」
そのものずばりの言葉をだ。堂々と言い切った。
「違うの?」
「結婚か」
「若奈さんはそのつもりよ」
にこにことして話す。兄に対して。
「お兄ちゃんと結婚してね。マジックをやっていこうって」
「何故そうなる」
「だって。お店に入るんじゃない」
「ただ就職するだけだ」
「何言ってるのよ。その就職は」
未久は最早満面の笑みだった。その笑みから出される言葉は。
「あれよ。永久就職」
「それが結婚だというのか」
「その通り」
芝居がかった言葉だった。
「だからよ。御願いね」
「妹だから半額か」
「当然の権利よね」
「そうなるというのか」
「そうよ。いいでしょ、それでも」
「いい訳があるか」
兄はそれはすぐにつっぱねた。
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