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髑髏天使
第一話 刻限その九
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「ここでな。人を喰らう」
「化け物が。誰が」
「あがいても無駄だ」
 牧村を完全に獲物として見ていた。やはり血走った目を彼に向けている。
「俺は何をしても喰らう。それだけだ」
「生憎俺はそう簡単に食われるつもりはない」
 言うまでもなく彼もはいそうですかと虎の餌になるつもりはなかった。虎人に負けない程の強い光の目を放ち相手を見据えていたのだった。
「やられる前にやる。それだけだ」
「どうするつもりだ?」
「こうする」
 応えてすぐにサイドカーの方に跳んだ。そして虎人が見ている間にそれに乗りエンジンをかけた。そのまま虎人に対して襲い掛かる。
「それは」
「覚えておけ。バイクだ」
 牧村はヘルメットを外したままだった。だが今はそんなことを考えている余裕はないのだった。
「本当はサイドカーと言うが今はいい。貴様をこれで」
「これで」
「轢いてやる」
 本気だった。とりあえず虎に対抗できるものは今はこれしか思いつかなかったのだ。それでサイドカーに飛び乗ったというわけである。
「幾ら貴様が虎でも。これの体当たりを受けて無事では済まないだろう」
「重そうだ」
 虎人は自分にサイドカーが向かって来るのを見ても冷静なままだった。
「そして速いな」
「そうだ。貴様よりも重くて速い」
 それがわかっているからだった。だからサイドカーでの体当たりに移ったのだ。マシンは一直線に虎人に向かっている。
「これで・・・・・・死ね」
「死ぬ。俺が」
「そうだ。貴様が死ぬ番だ」
 話の間にもサイドカーは速度を増していく。もう激突は間近だった。
「ここでな。俺は喰われん」
「確かに重くて速い」
 虎人の言葉の調子は相変わらずだった。何処か白痴めいたものすらそこにはある。
「だが。それだけでは俺は倒せない」
「なら・・・・・・受けろ」
 さらに速度を速める。もう虎人は目の前だった。
 そして遂に体当たりを浴びせた。虎人は後ろに大きく吹き飛びアスファルトに背中から叩き付けられた。これで終わりだと思った。
「終わったか・・・・・・んっ!?」
「確かに重くて速い」
 背中からアスファルトに叩き付けられた虎人はすぐに起き上がってきたのだった。頭が割れそこから血を流していたがそれでも生きていたのだった。
「しかし。それだけでは俺は死なない」
「馬鹿な、百キロは出していた」
「俺は人ではない」
 虎人はこのことをまた牧村に対して告げた。この言葉はさらに彼の心に深く入り込んでいく。
「ならば。この程度では」
「死なないというのか」
「人は俺の餌」
 殺意ではなかった。獣のそれ、餓えと食欲だった。その二つの感情が入り混じり一つになったものが今牧村に対してはっきりと向けられていたのだった。
「ただそれだけだ。わかったら
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