第四十五話 新生その七
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「それこそな」
「そういえば博士の家は」
「やしゃ孫の家族までおるぞ」
「一体家に何人いるんだ?」
「五十人はおる」
そこまでいるというのである。
「常に家におるだけでじゃ」
「それはまた多いな」
「今度はじめてのひひひ孫ができる」
「はじめてのか」
「まさかもう産まれるとは思っておらんかった」
自分でも想定の範囲外というのであった。
「しかしのう」
「子供が多かったのか」
「まず二人できるじゃろ」
具体的な話をはじめるのだった。
「それが四人、孫じゃな」
「曾孫が八人になり」
「常に嫁さんや旦那さんが来る」
「そこにやしゃ孫の家族もか」
「どうじゃ、それで五十は楽に超えるぞ」
「多過ぎないか、それは」
「家族は増えるものじゃ」
今ではあまりそうは言えないがだ。博士の家では違うのだった。
「凄いぞ。それでじゃが」
「家は満員か」
「アパート、いやマンションじゃな」
こう言い換えもした。
「メゾン永田というマンションを一つ丸ごと借りておる」
「そこが博士の家か」
「各部屋にバスやトイレがある」
「中々いい条件の部屋か」
「冷暖房も完備じゃ。空き部屋も全部使ってのう」
「それで家賃は」
「いや、もう買ったのじゃよ」
そうだというのだった。
「マンション丸ごとな」
「そうなのか」
「借りたというよりは買ったじゃな」
自分の言葉はここで少し訂正したのだった。
「そうなるのう」
「そうか。しかし五十人の家族か」
「子供も全部生きておるぞ」
「お子さんは幾つだ?」
「上は九十で下は八十七じゃ」
かなりの高齢である。
「兄妹でのう」
「そうなっているのか」
「それぞれの奥さんや旦那さんも健在じゃよ」
「長生きだな」
「わしの家系は代々長寿なのが自慢じゃ」
博士はここでは嬉しそうな顔を見せた。
「それでじゃ。子供達も孫達もずっとぴんぴんしている」
「家系でそうなのはわかるが」
牧村はここで言い加えてきた。
「しかしだ」
「しかし?」
「博士の奥さんも百歳は超えているな」
「百十じゃったかな」
何かを思い出すような顔をして牧村に述べた。
「確かな。それだけじゃ」
「それだけか」
「うむ、妻も長生きで何よりじゃ」
「長生きは伝染するのか」
その博士の奥さんや子供達の配偶者のことを聞いての言葉である。
「若しかして」
「いや、それはないじゃろ」
「しかし何故そこまで長生きする」
牧村はこのことに素朴な疑問を感じていた。
「有り得ないことだが」
「そういえばそうじゃな」
言われてこのことに気付く博士だった。
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