第四十五話 新生その五
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「百二十かも知れんが」
「とにかくその年齢になってもだ」
「うむ」
「歯は大丈夫なのか」
あらためて博士に尋ねた。
「そちらは」
「ああ、大丈夫じゃ」
博士はあっさりと答えた。
「それはな」
「そういえば何でも食べるな」
「歯は一本も欠けておらんよ」
かかか、と笑いながら話す博士だった。
「まさに一本もじゃ」
「そうなのか」
「髪の毛はこの通りじゃしな」
その長いぼさぼさとした髪を指差しもした。確かに真っ白になっているがそれでもだった。犬のそれの様にもさもさとさえしていた。髭もだ。
「目もじゃ」
「そうしたところは老いてはいないか」
「全くな」
そうだというのである。
「だからお好み焼きもじゃ」
「大丈夫か」
「さて、とびきり大きなものを焼いてもらおうか」
大きさも言うのであった。
「色々入れてもらってな」
「色々か」
「海老に烏賊に貝にじゃ」
「海のものばかりだな」
「そこに豚もじゃ」
さらに言う博士であった。
「とにかく何でも入れてもらってじゃ」
「豪勢にいくか」
「君もそうするじゃろ」
牧村にも問うてきた。
「そうではないのか?」
「そこまでは考えていなかった」
「まだ、か」
「今さっきまで何を食べるのかもまだ考えていなかった」
「それでなのか」
「しかし。お好み焼きだな」
それはもう決まっていた。二人の中では。
「それならだ」
「どうするのじゃ?それで」
「モダン焼きがいいか」
彼が言うのはこれだった。
「それにするか」
「モダン焼きか」
「久し振りにそれを食べたくなった」
「それもよいのう」
「ソースに鰹節をかけてだ」
「それか」
「うむ、それじゃ」
こう笑顔で話す博士だった。
「あと生姜に青海苔も外せぬのう」
「お好み焼きにはかけるものが多いからな」
「おっと、忘れてはならん」
ここでまた言う博士だった。
「マヨネーズもじゃな」
「そうだな。それもだな」
「うむ」
「忘れてはならない」
「マヨネーズがあるのとないのとでな」
「味が全く違うのがお好み焼きじゃ」
かなりのこだわりをこれでもかと見せている。しかも牧村もそれに乗っている。
「だからじゃな」
「そうだな。それではだ」
「うむ、行くとしよう」
こう話して実際にお好み焼きを食べに行く。移動は牧村のサイドカーを使ってであり博士は側車に乗っている。そうしてであった。
そして来たのはだ。西成だった。
そこの天下茶屋に入る。人がやけに多い場所だ。
その中学校の前でだ。二人はサイドカーを降りたのだった。
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