第四十四話 妖虫その二十五
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「そうか。面白いことになりそうだな」
「どう変わるのか私にもわからない」
「自分自身でもか」
「しかし、それは先程の戦いで既に感じていた」
そうだったというのである。戦いのはじまりの時のあの感触をだ。思い出しそのうえで男に返しながら述べた言葉であった。それだった。
「不思議な感覚ではあるな」
「そしてその感覚をさらに実感することになるだろう」
「間も無くだな」
「そうだ。そしてその時こそだ」
「戦いはさらにか」
「そういうことになる。また妖魔を出す」
男は告げた。
「楽しみにしていることだ」
「ではな」
牧村は彼に別れの言葉を告げた。
「また会おう」
「そうだな。まただ」
こう話してだった。彼等は別れた。
男は姿を消してだ。後に残るのは二人だけだった。
その牧村がだ。死神に言葉をかけた。
「さて」
「今日はこれで終わりだな」
「そうだな。そしてだが」
「そして、か」
「貴様もまた変わるか」
問うのはこのことだった。
「そうなるか」
「おそらくな。だがどう変わるかはだ」
「まだわからないか」
「自分でもわかりはしない」
こう牧村に言うのだった。
「果たしてだ」
「変わることは悪いことではない」
「貴様が言うと説得力があるな」
「そうだろう。俺はこれまで幾度も変わってきた」
髑髏天使としてである。だからこそ言えることであった。
「それは決してな」
「わかった。それではだ」
「恐れないことだ」
こう言ってであった。己の前にサイドカーを持って来てだった。
それに乗る。するとだった。
死神もだ。己の前にハーレーを盛ってきた。そしてそれに乗った。
そのうえでだ。牧村に言った。
「これからどうする」
「今日はこれで休む」
そうするというのであった。
「ではな」
「そうか。では私もか」
「休むか」
「休ませてもらう」
こう言って彼等は別れた。死神はそのハーレーで道を走りながらだ。目玉と話をしていた。
「ねえ」
「何だ」
目玉の方から声をかけてきたのだった。
「夏もそろそろ終わりだね」
「その話か」
「そうだよ、夏もね」
「長い夏だったな」
「うん。牧村さんの夏休みはまだ続くみたいだけれど」
「大学の休みは長いのだな」
「日本の学校は大体休みが長いね」
こう話す目玉だった。
「その中でも大学は特にね」
「そうかもな。しかし」
「しかしか」
「それは決して悪くない」
死神の言葉だ。
「人の世界の摂理としてな」
「そうなんだ」
「よく働きよく休むだったな」
「うん」
「それでいい」
「何かえらく穏やかな考えになったね」
「そうか」
目玉の言葉でだ。あらためて自分に気付いた彼だった。
そして
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