第四十四話 妖虫その二十
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「また見させてもらうとしよう」
「その時を待っていろ」
「是非な」
「話は聞いた。ではな」
男は今はこう返すだけであった。そうしてその上で彼は闇の中に姿を消した。彼が姿を消すと二人はだ。その妖魔を見据えるのであった。
「さて。貴様か」
「ドールといったな」
「そうだ」
何処からか声がした。妖魔の声だった。
地の底から響く様な声がだ。二人の耳に入った。
「我が名はドール」
「人形か」
牧村はその言葉を聞いてこう返した。
「そのまま言えば」
「人間の世界の一部の国の言葉ではそうなるな」
「だが。違うか」
「そうだ、違う」
そうだと返す妖魔だった。
「私の名はそうした意味ではない」
「貴様自身の名に過ぎないか」
「その通りだ。私は私だ」
こう牧村に返した。
「そしてだ。ここで貴様等をだ」
「倒すか」
「覚悟はいいな」
牧村だけでなく二人に対して言ってきた。
「それではだ」
「無論そのつもりだ」
「私もだ」
牧村だけでなく死神も言った。そしてだった。
二人共構えに入った。姿を変える構えにだ。
死神は己の右手を拳にして胸に置き牧村は両手を拳にしてその中指の部分を胸の前で打ち合わせた。そうしてそのうえで、であった。
白い光、青白い光が放たれてだった。二人は変身した。
牧村は髑髏天使に、死神は戦う姿にだ。それぞれなったのだった。
その中で死神はだ。己の中に何かを感じていた。
「これは」
「どうした」
「昂ぶりを感じる」
そうだとだ。牧村に返すのだった。
「私の中でだ」
「戦いを前にしてだな」
「まさか。これは」
「これは」
「貴様と同じなのか」
髑髏天使に顔を見ての言葉だった。
「まさか」
「そうなのかもな。しかしそれがわかるのはだ」
「うむ」
「戦いの中でわかることだ」
そうだという髑髏天使だった。
「貴様自身がな」
「そうだな。それでは行くとしよう」
「行くぞ」
「わかった」
髑髏天使は開いた右手を握り締め死神は右手に持った鎌を一閃させてだ。そのうえでだ。あらためて妖魔に対して対峙するのだった。
その妖魔を見るとだ。やはり巨大だった。
船を思わせるシルエットだが。どんな船よりもだ。遥かに巨大だった。
白いその禍々しいまでの巨大な姿を見てだ。髑髏天使はあの最高位の天使の姿になりながらその妖魔に対して言ってみせるのであった。
「貴様の武器はその身体か」
「それだけだと思うか」
「いや」
妖魔の今の問いはすぐに否定した。
「それはない」
「そうだ。私はそれだけではない」
まさにその通りだという妖魔だった。
「それは言っておく」
「口か」
見ればだ。身体のその戦端に口があった。黒い空洞がだ。
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