第四十四話 妖虫その十八
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そしてだ。その彼等に対して言ってきた。
「揃ったな」
「来てやったと言うべきか」
牧村はあえて傲慢に返してみせた。
「ここは」
「来てやった、か」
「そうだ。来てやった」
そうだというのである。
「あえてここにな」
「それで戦うのだな」
「無論だ。それで相手は誰だ」
「急くことはない」
男は牧村の作った傲慢に対して余裕で応えた。
「別にな」
「では既に用意をしているのか」
「そうだ。それではだ」
こう話してだった。男はふとその目を光らせた。
するとだ。牧村達はそれだけで何処かに連れて行かれた。そこは。
「何だここは」
「何もない」
「うん、何もないよ」
二人だけでなく目玉も言う。
「漆黒の中」
「しかし渦巻いているな」
「ここってまさか」
「そうだ、混沌の中だ」
一堂の前に男がいた。そのうえでの返答だった。
「ここがだ」
「何故ここに呼んだ」
死神が男に問うた。
「何故だ」
「見てもらう為だ」
その為だと。男は答えた。
「その為だ」
「見てもらう、か」
「如何にも」
その通りだとまた返す男だった。
「この混沌こそが我等の故郷」
「故郷か」
「この中が」
「そして我等の父であり母でもある」
そうしたものでもあるというのだ。
「つまりだ。ここはだ」
「貴様等にとって全てか」
牧村が言った。
「そうだというのだな」
「如何にも。そしてだ」
また言ってきた男だった。
「いいか」
「来るというのだな」
「私ではないがな」
「またか」
「私と戦うのはまだ先だ」
こう二人に言うのである。
「楽しみは後に取っておくことだ」
「別に楽しみにはしていない」
牧村がそれを否定した。
「ただ。貴様を倒さなければだ」
「混沌がこの世を覆う、か」
「そうだ。この混沌がだ」
それがだと返すのである。
「それはさせる訳にはいかない」
「私としてはそれが望むところだがな」
「残念だが俺はそうではない」
「私もだ」
死神も言う。そうしてだった。
死神はだ。あらためて男に問うた。
「それでだが」
「相手か」
「そうだ、私の相手は誰だ」
「俺の相手もだ」
その相手に対する問いだった。牧村も問うのだった。
「今度はだ」
「どの妖魔か」
「今回も面白い相手を用意しておいた」
男は悠然と笑って二人に対して告げた。
「この空間ならではのだ」
「この空間か」
「この混沌の世界でか」
「一つ約束しておこう」
男はここで笑って言ってみせてきた。
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