第四十四話 妖虫その十七
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「実はね」
「妖魔についてはか」
「お互い原初からいるけれど」
「古いか」
「原初の中で産まれたけれどお互いを知らないことだってあるんだ」
「違う存在だからだな」
「うん」
その通りだというのである。
「それでなんだ。まだわかっていることは少ないままだよ」
「そのことはわかった」
「そのことはだね」
「だが他はまだわからない」
不満の文体だが言葉にはそれは含まれていなかった。
「それもわかった」
「わかってくれたね」
「では行くとしよう」
家の玄関に出るとだ。そこにサイドカーが来た。
それに乗り目玉が案内する場所に向かう。そこは。
通天閣の下だった。そこに来たのだ。周りには商店が立ち並んでいる。賑やかな通天閣の下にだ。彼と目玉はやって来たのである。
そこに着くとだ。目玉は冗談めかしてこう言ってきた。
「悪いけれどね」
「何だ」
「串カツは後でね」
これが目玉の冗談であった。
「戦いの後でね」
「そうだな。そうするとしよう」
牧村も彼のその冗談に応える。
「勝ってその祝いにだ」
「そうそう」
「ただ。酒は飲めない」
このことも言う。
「それはな」
「ああ、そうだったよね」
目玉もそれを聞いて声で頷いた。
「そっちはね」
「身体が受け付けない」
何故飲めないか。その理由も話した。
「どうしてもな」
「体質ね。仕方ないね」
「仕方ないか」
「日本人には時々いるみたいだね。そういう身体が受け付けない人は」
「そうらしいな。それでだが」
「うん」
「死神はまだか」
その通天閣の下で目玉に問う。
「あの男は」
「もう少しで来るよ」
目玉は明るい声でこう返した。
「もう少しでね」
「来るのか」
「今ちょっと仕事をしてるから」
「命を送り届けているのか」
「そう。死神の本来の仕事をね」
しているというのである。
「それをしてるから」
「戦うのは本来の仕事ではないのか」
「そう。それでなんだ」
「わかった。では待とう」
牧村は応えた。そのうえでサイドカーを降りた。
そこから降りるとだ。そこにだった。
あのハーレーが来た。そしてそこに乗っているのは。
あの男だった。彼はそのハーレーから降りてヘルメットを脱いでだ。そのうえで牧村に対して言うのだった。
「遅れたな」
「事情は聞いた」
牧村はその彼に静かに返した。
「そういうことか」
「そうだ。そしてだが」
「ああ」
「はじまるぞ」
死神から牧村に告げてきた。
「いいな」
「よし、それではだ」
「来るぞ」
死神のその言葉と共にであった。向かい側からだ。あの黒い男が来た。彼は悠然と歩きながらだ。そのうえで二人と目玉のところに来たのだ。
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