第四十四話 妖虫その十二
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「そういうことだから」
「また随分と話が早いな」
「それだけ見込まれてるってことよね」
「よくそんな自分に好意的に考えられるな」
「考えるわよ」
まさにそうだというのであった。
「だってね」
「だって。何だ」
「そっちの方が楽しいじゃない」
にこりと笑って述べる。
「そうでしょ?人間積極的にね」
「まあ確かにそうだがな」
「そうでしょ?だからね」
「しかし言っておく」
兄として彼女に話す。
「いいな、多少はだ」
「最悪の事態も考えろってこと?」
「楽観だけでは駄目だ」
「けれど悲観だけでも駄目でしょ」
「それもその通りだ」
「じゃあ楽観の方がよくない?」
「九十五の楽観と五の悲観だ」
その割合だというのである。
「それでいいな」
「結局楽観の方がずっと多いじゃない」
「その通りだがだ」
「僅かな悲観も必要なのね」
「そういうことだ。ここで重要なのはだ」
「何?」
「悲観のことだ」
このことであった。未久のそのあまりにも多い楽観の正反対のものである。それについて彼はここで細かく話をするのであった。
「それは多過ぎるとだ」
「駄目よね」
「悲観が多いと騙される」
「そうなるの」
「世間には最悪の事態が来ると吹聴する輩もいる」
「詐欺師?」
「そうだな。詐欺師だ」
まさにそれだというのだ。
「世界が滅亡する、人類はいなくなる、世界経済が崩壊するとな」
「よくそう言う人っているわよね」
「そうした最悪の事態は避けられないと煽る」
こうした本は巷に氾濫している。嫌になる位にだ。
「そして己の目的に誘導したりするのだ」
「タチ悪いわね」
「己の本を売る為に行っている者もいる」
「余計に悪いじゃない」
「極端な悲観性はそれに乗せられる」
そうなるというのだ。
「そして騙される」
「ううん、注意するわ」
未久は考える顔で述べた。
「それじゃあそれはね」
「そうしろ。楽観の方がいいがな」
「それでも悲観も少しだけ入れて」
「しかし悲観には捉われるわ」
「わかったわ」
あらためて頷くのであった。
「ううん、世間には悪質な人間がいるのね」
「そうだ、いる」
いるというのだ。
「それはわかっておけ」
「よくある予言の本とか?」
「ああいうものはまだいい」
「まだいいの」
「面白おかしく書いているだけだからな。さらに悪質な人間もいる」
「どんな奴?それって」
「例えだが」
こう前置きしてからの言葉だった。
「海援隊の再来とか自称する人間はだ」60
「要注意ね」
「絶対に信用するな」
兄もこうまで言う。
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