第四十四話 妖虫その八
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「作るとだ。美味い」
「ああ、それはじゃ」
「それは?」
「普通に料理をしたら美味いのじゃ」
博士はこう牧村に対して答えた。
「その場合はじゃ」
「そうなのか」
「しかしイギリスではまずいのじゃ」
「つまりそれって」
「そうだよね」
「イギリスの料理人って」
妖怪達が言う。
「相当な腕の悪さだよね」
「っていうか素人ばかりなんじゃ」
「そうかもね」
「牧村さんはお菓子作るの確かに上手いけれど」
「それでも。本場の人じゃないし」
日本人である。それでもなのだった。
「本場の味ってやっぱり違うけれどね」
「カステラにしても蕎麦がきにしてもね」
「けれどイギリスは例外なんだ」
「そういう国なんだね」
「例外もいいところじゃ」
また忌々しげに言う博士だった。
「あの国ではイギリスの食べ物は口にしないことじゃ」
「朝食だけだったな」
ここで牧村は言った。
「それ以外はだったな」
「そういうことじゃ。食べないようにな」
「嫌な国だなあ」
「食べ物がそこまでまずいってね」
「全くだよね」
「そんな国なんだ」
妖怪達も言う。そうしてそのうえでその日本人が作ったイギリスの御茶やお菓子を食べていた。それは確かに美味いものだった。
屋敷に帰ってトレーニングをした。それが終わりシャワーを浴びたところでだ。屋敷に妹の未久が来たのであった。
「来たのか」
「うん」
陽気な顔で答える未久だった。
「明日土曜だからね」
「部活がないからか」
「塾もないの」
どちらもだというのだ。
「だからなんだけれど」
「それでまたこの大阪にか」
「お兄ちゃんは何時帰って来るの?」
妹は自分の為に用意されたその部屋に入る。そうしてそのうえで、である。荷物を置きながらそれを手伝う兄に話しているのである。
その中でだ。妹はこう兄に問うたのだ。
「それで」
「それでか」
「そうよ。夏休みの間ずっといるの?」
「そのつもりだ」
そうだというのである。
「それでだが」
「それで?」
「家はどうなっている」
彼が本来住んでいる神戸の実家についての話だった。
「それでだが」
「別に」
「何ともないか」
「そうよ、何ともないよ」
また言う未久だった。
「別にね」
「ならいいが」
「ただね。お父さんとお母さんはね」
「どうなっている」
「お兄ちゃんが帰って来ないから寂しがってるよ」
「そうなのか」
「たまには帰って来たら?」
それでこう話すのだった。
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