第四十四話 妖虫その六
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「それがわしの方針ではないかのう」
「はい、その通りです」
「さすればじゃ」
ここまで話してであった。また話す博士であった。
「その論文も書かせてもらおう」
「それでどの場所の臓器移植について書かれますか」
「心臓じゃな」
そこだというのである。
「そこについて書こう」
「心臓ですか」
「臓器移植の中でもとりわけやりがいのある場所じゃ」
博士は楽しそうに話す。
「最も難しくかつ最も重要な臓器じゃからな」
「博士は心臓移植が得意ですしね」
「好きこそものの上手なれじゃな」
また笑顔で言う博士だった。
「そういうことじゃな」
「そうですね。それでは」
「うむ、帰ってからじゃな」
「はい、それからです」
ろく子は時間はそれからと述べるのだった。
「それで書かれるのにどれだけで」
「一日あれば充分じゃろ」
博士は素っ気無くその必要な時間を述べた。
「それだけあればのう」
「では」
「うむ。それではじゃ」
ここまで話してであった。あらためて向かいにいる牧村に話す。
「大学でもじゃ」
「そちらでもか」
「調べてはおく」
そうするというのである。
「当然君のこともな」
「この新しい力のこともだな」
「そういうことじゃ。その力かなりのものじゃな」
「そうだな。これまではそれぞれの力はそれぞれの天使でないと使えなかった」
「うむ」
「しかし今は違う」
こう博士に話す。
「そのままの姿で使える」
「黄金の六枚羽根のままでか」
「使える。それだけでもかなり違う」
「そしてその力自体もじゃな」
「それも全く違う」
そのことを細かく話す牧村だった。
「絶大な力だ」
「全くじゃな。それではな」
「頼むな」
「頼まれたぞ」
博士はにこりと笑って彼に返した。
「今しかとな」
「わかった。それではだ」
「今日はこれからどうするのじゃ?」
博士が彼に今度問うたのはこうしたものだった。
「それでじゃが」
「またトレーニングだ」
「それか」
「ああ。例えどれだけ天使の力を手に入れてもだ」
彼は真剣な面持ちで話す。
「それを俺が使いこなせなければ意味がないな」
「そうそう」
「幾ら天使の力が強くてもね」
「それを使って制御するのは牧村さんなんだから」
妖怪達もその彼に語る。
「牧村さんが弱かったらね」
「どうしようもないからね」
「振り回されるからね」
「だからだ。またトレーニングだ」
また話す牧村だった。
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