第四十四話 妖虫その四
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「あんた達もだ。友達だ」
「うわあ、はじめて言われたね」
「そうだよね」
「はじめてだよ」
妖怪達は牧村のその言葉をまた聞いて笑顔になった。
「牧村さんにそんなの言われたなんてね」
「いつも何考えてるかわかりにくかったのに」
「無愛想な感じでね」
「そうそう」
「無愛想か」
「うむ、無愛想じゃな」
それは博士も言う。
「君程無愛想な人間もそうはいないな」
「そうか」
「自覚しておらんかったのか?」
「いや、している」
言葉は現在形だった。
「前からだ」
「そうじゃな。まあ無愛想なのも個性じゃ」
「そうなのだな」
「君だけ無愛想な人間は少ないがな」
こうも話すのであった。
「それでも無愛想もまた個性じゃ」
「まあ僕達みたいに陽気なのはね」
「少ないと思うけれどね」
「明るく楽しくばかりっていうのもね」
「そうそう」
妖怪達はこう述べるのであった。実際に彼等はいつも通り明るく朗らかである。能天気とまで言っていい程の明るさである。
「明るく生きてこそだしね」
「それが妖怪の人生だし」
「あれ、人生じゃないんじゃ」
「ああ、妖怪だからね」
「そうそう」
こんな話もするのだった。その中でだ。
雪女がだ。かき氷を食べながら述べる。
「ただねえ」
「ただ?」
「暑い」
「今年は特に暑いわね」
その白い肌が溶けそうになっていた。
「ほら、私あれじゃない。雪女だから」
「夏は苦手だよね」
「やっぱり」
「わしもじゃ」
「おいらもだよ」
毛むくじゃらの雪男と昔の雨傘を被った雪ん子も困った顔になっている。
「夏はのう。いつもじゃが」
「苦手なんだよ」
「まあ冬の妖怪だからね」
「それは仕方ないね」
「やっぱりね」
「クーラーと氷が欠かせないわ」
雪女が言った。
「だから冷凍庫の中がね」
「いいものじゃ」
「全くだよ」
雪男と雪ん子もそうだと話すのであった。
「冬が恋しいぞ」
「早く冬にならないかな」
「ううん、冬かあ」
ここで困った顔を見せるのは河童だった。
「冬って川が凍るからなあ」
「それで外に出られなくなるよね」
「川の中にいたら」
「それで割るのが面倒なんだよ」
河童はこう話す。
「ちょっとねえ」
「河童は冬が嫌いだったんだ」
「そうだったんだ」
「そうだよ。どうもね」
また話す河童だった。
「好きになれないね」
「冬が一番いいのに」
雪女はこうであった。
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