第六話 大天その十三
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「ですから。今は貴方のお相手はしません」
「では帰れ」
ぶしつけな調子で老人に返した。
「俺が用があるのは闘う魔物だけだ。それ以外にはない」
「確かに私は『今は』闘いません」
「今は、か」
「そうです。今は」
「わかった。では今は貴様の相手はしない」
とりあえずは彼に対しては闘志を向けないことにした。
「では帰らせてもらうぞ」
「いえいえ、そうしてもらっても困るのです」
「何っ!?」
呼び止められてその目がまた鋭くなった。
「だが貴様は今は」
「私だけではないので」
にこやかだがその裏には底知れぬ何かを宿らせた不気味な笑みで牧村に告げてきた。
「ここにいる魔物は」
「もう一人か」
「何度も言いますが私は今は貴方とは闘いません」
そのうえでこのことを念押ししてきた。
「ですから。どうぞお行き下さい」
「魔物がいる場所にか」
「何でしたらサイドカーはお預かりしますが」
「それには及ばない」
それは断った。
「細工をしたり調べたりするつもりはないようだがな」
「ええ。そのサイドカーに興味はありませんので」
今も一瞥だにしない。心から今牧村が乗っているサイドカーに対して興味がないのがわかる。興味があるのはあくまで彼自身に対してだけということだった。
「それは御安心下さい」
「だがそれでもいい」
こう言われてもやはり断るのだった。
「これは俺が望めばそれで動くからな」
「随分と便利なもので」
「頼りにはしている。それでだ」
ここまで話したうえでまた老人に言葉を向けた。
「俺と闘いたいという魔物は何処だ」
「あちらです」
老人はすぐにそれに応えて彼から見て右手、牧村から見て左手にあるそのビルを指し示した。それはビル街によくあるごく普通の高層ビルだった。
「あちらの屋上に」
「屋上か」
「案内致しますが」
「それもいい」
この申し出も断る牧村だった。
「自分で行く。それだけだ」
「左様ですか」
「一応礼は言っておく」
サイドカーから降りながら老人に述べた。
「サイドカーを気遣ってくれたり案内を買って出てくれたことにはな」
「闘いと関係なければ何でも」
「そうか。しかし」
サイドカーから完全に降りビルに身体を向けたところで老人を見た。それと共に彼が秘めている何かも見てそのうえでまた言うのであった。
「貴様は。やはり只の魔物ではないな」
「おやおや。またご剣呑な」
「気配でわかる」
鋭い目で彼に告げる。
「そのとてつもなく巨大な気配。貴様は何だ?」
「さて。何でしょうか」
「これまで俺が闘ってきた魔物達が人だとすると」
それぞれの気配を思い出しながら老人に語る。
「貴様のそれは神だ。まさにな」
「神ですか」
牧村にそう言
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