暁 〜小説投稿サイト〜
髑髏天使
第四十四話 妖虫その三

[8]前話 [2]次話

「今度の妖魔って」
「僕達は戦ったりはしないけれどね」
「それでも何かを感じるよね」
「どうしてもね」
「だから。牧村さん」
 ここまで話してあらためて牧村に声をかける彼等だった。
「いい?気をつけてね」
「これまで以上にね」
「少しでも油断したりしたら引き込まれるから」
「その混沌の中にね」
「引き込まれそして」
 今度は牧村自身の言葉である。
「その中でどうなるか」
「君は死ぬどころではなくなるだろうな」
 博士は腕を組み深刻な顔になっていた。
「髑髏天使でもなくなる」
「当然人間でもか」
「どちらでもなくなる。混沌に完全に飲み込まれ」
 そうなってからだと。博士はさらに話す。
「混沌の中で永遠にその意識だけが残る」
「それって多分だけれどね」
「そうだよね。辛いよね」
「間違いなくね」
「大変だよね」
「そうだよね」
 妖怪達も珍しく深刻な顔になっていた。
「混沌の神々の中に入るのか」
「それとも混沌にずっと食われながら意識だけが残るのか」
「混沌そのものになるのか」
「どれにしても碌なものじゃないだろうね」
「それは間違いないね」
「牧村さんは少なくとも牧村さんじゃなくなるよ」
 このことだけは確かだった。
「死ぬよりも辛いその中でね」
「そうなるし」
「それに奴等がこのまま大きくなったらね」
「僕等もね」 
 彼等自身の話にもなる。
「その中に取り込まれてね」
「そうなるよね」
「世界全体がね」
「そうなってしまうよ」
「全てが」
「世界を守るとかそういうことは考えたことはない」
 牧村は自分のその席に座ったうえで述べた。
「しかしだ」
「しかしか」
「そうだ」
 こう話してであった。
「俺は少なくとも生きるつもりだ」
 それは確かだというのだ。
「戦い、そしてだ」
「生きるんだね」
「絶対に」
「それ以上に守るものがある」
 今までの牧村にはない言葉だった。
「それもある」
「あれ?好きな人とか?」
「若しかしたら」
「そうだ。そして大切な人間がいる」
 こうも言った。
「そうした相手がいるからだ。俺は戦う」
「そうなんだ」
「そういう風になったんだね」
「博士も。そして」
 さらに言う。その言葉を向けたのは。
「あんた達もだ」
「あんた達?っていうと」
「僕達かな」
「そうだよね」
「それって」
 妖怪達は今の彼の言葉にはきょとんとした顔になった。
「まさかと思うけれど」
「違う?」
「いや、ひょっとして」
「やっぱり」
「その通りだ」
 だが牧村はここでまた彼等に言った。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ