第四十三話 熾天その六
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「さらにだな」
「そうするのは御前自身だ」
「頑張ることよ」
「ああ、そうする」
祖父母の言葉にまた頷いた。するとであった。
ここでだ。祖母が笑顔でこんなことを言ってきたのであった。
「それでね」
「むっ、何だ」
「あの娘いるよね。あの小柄な娘」
「あいつか」
「そうよ、あの娘よ」
祖母が話すのは若奈のことだ。大阪でもトレーニングを共にしている彼女である。
「あの娘はどうなのよ」
「どうと言われてもな」
「私もかなり長生きしたわ」
こう前置きもしてみせたのだった。
「かなりね。けれど最後の望みはね」
「わしもだ」
祖父が間合いを見計らったかの様に参戦してきた。
「もう最後の望みはだ」
「御前も未久も他の孫達もね」
話が大きくもなっていた。
「結婚してねえ」
「曾孫の顔が見たいな」
「それか」
牧村の眉がだ。ここでは一瞬だがピクリと動いたのだった。
「それを言うか」
「どうだい?あの娘は」
祖母は彼にさらに言ってきた。
「いつも一緒にいるし仲はいいんだろ?」
「それにいい娘だ」
祖父はこのことをもう見抜いていた。
「それもかなりな」
「そうですよね。いい目をしていますね」
「あの目は心根の美しい娘ならではの目だ」
「よく気がつくし親切だし公平だし」
「あんないい娘が今時いるとはな」
「昔からそうはいませんよ」
とにかく若奈を絶賛する二人だった。
「あんな娘はそうは」
「そうだな。あの娘ならいい」
祖父は勝手にこんなことを言った。
「来期、あの娘にしろ」
「大学を卒業したらね。どうだい?」
「何故そんな話になる」
だが彼はここでは憮然として返した。
「どうしてだ、それは」
「それはね。当たり前じゃないか」
「わし等の最後の望みだぞ」
祖母も祖父も強い言葉になっている。そのうえで茶を飲みながら孫に対して言うのであった。話は何時しかそうしたものになっていた。
「夫婦になってこそなんだし」
「そうだ、それが世の中だ」
「そこまでは考えてはいない」
今はこう答えるだけの彼だった。
「そんなことはだ」
「そう思っていてもね」
「すぐだぞ」
やはり歳の功だ。二人の方が上だった。
「結婚する時が来るのはね」
「その時だ。どうするかだ」
「その時はすぐか」
今の牧村にはこのことだけが頭に残った。
「本当に」
「すぐだよ」
「あっという間だよ」
また言う祖父母であった。
「さて、その時はだ」
「楽しみにしているからね」
「わしはそれまで生きるからな」
「曾孫の顔を見るまではね」
「子供か」
二人にとっての曾孫とはだ。彼にとっての子供であった。それを聞くとである。どうにも実感が沸かずそのうえで言うのであ
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