SAO編
四十九話 過ぎゆく夜
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「────、──、────」
始め、漂う雲を思わせるものだった音達が、曲が進むうち、段々と強く、芯を持ったそれへと変わっていく。
丁度、一人の弱かった人間強さを得、魂に芯が根付いて行く過程を見ているかのように。
「───────、──」
サチの声が一気にその力強さを昇華させ、呼応するように伴奏が一気に強さを増す、
《力の音》が聴く物全ての身体と、魂に共振を促す。
「──、─、─────────!」
最後に響いた声は、リョウが伴奏をやめるまで、教会の建物をジンと震わせ続けた。
────
「ふぅ……」
今日の分の訓練を終えたリョウは、自分達五人にあてはめられた寝室の窓際で、天を塞ぐ鋼鉄の天井とその向こうの夜空を仰ぎ、小さくため息をつく。
原因は、先程、カレーが出来る前に、サーシャと交わした、とある会話だった。
────
『教会に……金を援助してくれたって人の名前、もしかして、シュテルンって言いませんでした?』
『……っ!?知っているのですか!?』
血相を変えて問うてきたサーシャに、リョウは、「少しだけですけど」と言って、そのまま質問を続けた。
幸い、サチとアスナは厨房で料理を、キリトは別の部屋でユイ以下子供達の相手をしていたので聞かれなかったが、それから少しの間、サーシャはこの教会に以前は表れていた、《シュテルン》と言う少女に付いて話してくれた。本当は、リョウも少なからず知っている。その少女の話……
『あの子とは、たまたま私達が街に残った子供を探している所に出くわして、手伝ってくれたのが最初だったと思います。私達の事情を知ってからという物、ちょくちょく、此方に顔を出してくれるようになって……子供達も、あの子の事を姉のように慕っていました……』
『ははは、あいつらしい。じゃあお金って言うのは?』
『もともと、上層階で戦っていた子みたいで……有る日、突然……本当にいきなり言い出したんです。「私がお金稼いで来る!」って。初めはいいってって言ったんですが、あの子、言い出したら聞かなくて……』
『でしょうね。よく分かります』
『私達も、あの頃はかなり切り詰めた生活でしたから、甘えて……しまったんでしょうね。結局、週に一回くらいのペースで資金面の援助をしてもらってたんですが……有る日、ぱったりと此処に来なくなってしまったんです……心配になって、石碑を確認に、行ったら……』
その後の言葉は……続かなかった。両手で顔を抑え、しゃくり上げながらサーシャは首を横に振る。
『私……あの子がうちのっ……ウチのお金を稼ぐために……無茶して……死んでしまっ、たん、じゃないかって……ごめんなさい……ごめんな、さいっ……!』
泣きながら懺悔の言葉を繰り返すサーシャに、リョウはなるべく優
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