第四十三話 熾天その一
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髑髏天使
第四十三話 熾天
牧村は夕食を食べ終えた。そしてその後にすぐにであった。
「それではだ」
「茶か」
「今から用意をはじめる」
祖父はこう孫に告げるのだった。
「今からだ」
「それで今から茶室にか」
「篭る。その間婆さんの手伝いをしておくれ」
孫にこうも告げるのだった。
「わかったな」
「そうだな。ここはだ」
「ああ来期、悪いけれどね」
祖母もここで孫に言ってきた。丁度食器をなおそうとしていた。
「鍋とフライパンを洗ってくれないかい?」
「それをか」
「あんたはそれで私は他のを洗うよ」
笑ってこう孫に告げる。
「それでいいかい?」
「構わない。むしろ」
「むしろ?」
「こちらからそうさせてもらいたい」
彼の祖母への言葉であった。
「いつもの様にな」
「そういえばそうだね。あんたも若奈も食器洗うわね」
「食器を洗うことは得意だ」
牧村はちゃぶ台から立ち上がった。そのうえで鍋やフライパンを使ったコンロのところに向かう。そしてそこから洗面所にその鍋やフライパンを置き早速洗いはじめた。
洗剤をかなり使っている。そのうえでまずはフライパンと鍋を一回手で洗ったのだった。
「手洗いなんだね」
「最初はな」
その理由も祖母に話した。
「墨があるからな」
「おや、しっかりしてるねえ」
「墨はスポンジに着きやすい」
彼は述べた。
「だからだ」
「そうそう。だから最初は手洗いだね」
「墨を落としてからだ」
また言うのであった。
「それからだからな」
「そうそう。イカの墨は美味しいけれどね」
「後片付けが問題だな」
「わかってるじゃない、来期も」
「洗いものをしていればわかる」
その言葉は当然といったものだった。
「食べるには何かをしないとな」
「洗いものもそのうちの一つなんだね」
「そう思うが違うか」
「中にはそうじゃない人もいるからね」
祖母は悲しい声を出した。
「そういう人もいるよ」
「いるな、確かに」
「まあ来期はそういう人じゃないからね」
孫の性格や人間性はわかっていることであるのだ。
「そういう人はどんどん落ちていくよ」
「人間としてか」
「そうだよ。人が周りで必死に働いていてもぼーーっとした顔で突っ立っているだけで何もしようとしない人はあんたも見たことがあるね」
「残念だがある」
そうした人間は何処にでもいるのだった。二人は洗いものをしながら話す。牧村はもう墨を洗い落としスポンジで丹念に洗いはじめている。
「何処にもいるな」
「そうなんだよね。それでね」
「それで?」
「酷い人が道場に出入りしていてね」
「どんな人間だ
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