暁 〜小説投稿サイト〜
髑髏天使
第四十二話 共闘その二十一
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

「中華だってそうだし」
「何でも作れたのか」
「戦中派を甘く見ないことよ」
 今度の言葉はこれだった。
「何でも作れるからね」
「そうだぞ」
 ここで今度は祖父が出て来た。相変わらず背筋がしっかりしている。
「わしも陸軍士官学校を出ているのだ」
「そういえばそこを出ていたな」
「そこで鬼と言われていた」
 祖父は孫にこんなことも言ってきた。
「竹刀を持てば右に出る者はいなかった」
「そうそう、お爺さんはその頃から剣道が強くてねえ」
「そして風流も好きなのじゃぞ」
「風流もか」
「昔の軍人はただ強ければいいものではなかった」
 ここが重要なのだ。軍人、しかも将校ともなればかなりの教養も求められたのである。これは陸軍だけでなく海軍も同じだ。
「料理はせんかったがな」
「それはか」
「それは婆さんに任せている」
 言葉は現在形であった。
「じゃが茶道はするぞ」
「お爺さんの入れた茶はこれがねえ」
 祖母の言葉は妙に嬉しそうなものだった。
「凄く丁寧で美味しくて」
「茶道も身に着けておるのじゃ」
「そちらもか」
「スパゲティの後で淹れてやる。楽しみにしておるのじゃ」
「そうさせてもらう」
「さて、パスタだけれどね」
 祖母もいそいそとした口調である。
「量はかなりあるからね」
「それはいいな」
「あんた本当に食べるからね」
 その牧村を見て笑いながら話していた。
「だから量も考えてるよ」
「イカ墨のそれをか」
「そうそう。あれは美味しいよね」
 祖母は笑顔をさらに明るいものにさせていた。
「一回食べると病みつきになるね」
「全くだ。しかし」
「しかし?」
「まさかここで洋食を食べるとはな」
 牧村にとってはそれが以外なのだった。
「どうもな」
「その意外なのがいいのよ」
「そうだぞ。わしが茶道をやっていることも意外だったか」
「それもしていたのか」
「しかも先生もやっておる」
 そこまで至っているのである。
「茶道は元々武家のたしなみじゃ」
「織田信長だな」
「そういうことじゃ。軍人は教養も大事じゃった」
 このことを自分自身でも話すのだった。
「漢詩もやっておったぞ」
「そちらもか」
「何かとな。学んでおった」
「軍人は大変だったのだな」
「よく陸軍は言われておるがな」
 左翼勢力にである。とかく言われてきたのが帝国陸軍である。
「しかし実際は違った」
「軍規軍律は厳格だったな」
「左様、恐ろしいまでにじゃ」
 これは伝説の域にまでなっていることである。
「まあ俗に言われているようなことはなかった」
「実際はそうだったな」
「そもそも日本刀一本で百人は斬れぬ」
 祖父はこのことも話してきた。
「それはわかるな」
「常識の話だ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ