第四十二話 共闘その十八
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「それも大好きだ」
「そうなのか」
「何と勘違いしている」
そして紳士はこう牧村に問い返してきたのだった。
「映画のあれか」
「そうだ。ドラキュラだが」
「確かにそうした吸血鬼もいる」
「やはりいるのか」
「スラブにはな」
その吸血鬼発祥の地だ。元々吸血鬼というものはスラブやギリシアに伝承が多い。とは言っても世界各地に存在はしているものである。
「だが私は違う」
「大蒜は平気か」
「流れる水も太陽も平気だ」
その二つもだというのである。
「どちらもだ」
「吸血鬼の弱点はか」
「ついでに言えば十字架も聖水もどうということはない」
この二つもであった。
「無論銀もだ」
「吸血鬼の弱点は全て何ともないか」
「そもそも私は神だ」
魔神としての己も話すのだった。
「そうしたものを苦手とすると思うか」
「神か」
「神の力は普通の魔物とは違うのだからな」
「そうだな。言われてみればそうだ」
牧村もその言葉には納得した。
「魔物ならばだな」
「これでわかったな」
「うむ」
紳士のその言葉にも頷いた。
「そういうことか」
「それでだ。今から食べに行く」
「好きにするといい。誰が何を食べようが構うことはしない」
「それはないか」
「ない。どうでもいいことだ」
牧村の言葉はここでは素っ気無くすらあった。
「誰が何を食べようとな」
「人間はどうじゃ」
「それは許さん」
老婆の言葉には即座に返してみせた。
「髑髏天使として相手になる」
「ほっほっほ、安心せい。それはない」
だが老婆はここでそのことは否定してみせた。
「人間なぞ食いはせぬわ」
「食わないというのか」
「左様、食わん」
老婆は笑ったまま話した。
「美味いものが満ちておるからのう」
「そこまでか」
「何処にでもある。美味いものはな」
「そのパスタもか」
「パスタだけではない。他にも色々とあるではないか」
そしてだ。老婆が話に出した料理はこれであった。
「天麩羅などのう」
「天麩羅か」
「蟹鍋もいい。いや、海のものはいいのう」
「確かロシアだったな」
牧村は少し怪訝な目になって老婆に問うた。老婆はバーバヤガーである。ロシアにいる魔神であり言うならばロシアの山姥である。
「そうだったな」
「そうじゃが」
「それでも海のものは好きか」
「好きになったのじゃよ」
老婆はまた笑ってこう話した。
「この時代のこの国に入ってからじゃ」
「それでか」
「天麩羅だけでなく刺身や煮つけやフライも好きじゃ」
そういうものも話に出すのであった。
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