第四十二話 共闘その七
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「それはな」
「カレーだけじゃないって?」
「そうなの?」
「じゃあ他には」
「お好み焼きもたこ焼きもじゃ」
博士が言うのはそうしたオーソドックスな大阪の食べ物だった。
「それにうどんもじゃ」
「多いね」
「それも結構」
「大阪って美味しいもの多いんだ」
「つまりは」
妖怪達は皆で話すのだった。
「いい場所だね、本当に」
「美味しいものが多いって」
「しかも安いし」
「安くて美味しい」
また話す彼等だった。
「大阪が羨ましいよ」
「神戸も美味しいものが多いけれど」
「大阪ってそれ以上だよね」
「こんないい街ないよ」
「わしはよく来るぞ」
博士もまたそのカレーを食べている。この店の名物のそのカレーをだ。食べながらちらりとだ。店の壁にかけている織田作之助の写真を見た。
「そういえばのう」
「どうしたの?」
「今度は」
「残念じゃ」
その織田作之助の写真を見て言うのだった。
「まことにな」
「残念って?」
「この写真の人が?」
「そうなの」
「結核でな。若くして亡くなったからのう」
織田作之助は終戦後すぐに死んだ。結核で僅か三十四歳で亡くなっている。大阪にとってこの作家の死はあまりにも寂しいものだった。
「それが残念じゃ」
「そういえば博士って百十歳超えてるけれど」
「この人知ってるの?」
「若しかして」
「酒が飲めなくてのう」
博士はまたその作家を見て残念そうに話した。
「それでコーヒーが好きじゃった。甘いものがな」
「コーヒー、ああそうだね」
「この写真にも一緒に写ってるね」
「これがなんだ」
「そうだったんじゃ。好きだったんじゃ」
また話す博士だった。カレーを食べながらだ。
「それで菓子を食べながら何度も話をした」
「何時の話?」
「戦争前と戦争中じゃった」
博士の言葉はしみじみとしていた。
「戦争の後は食べ物がなかったからのう」
「戦争中もなかったよね」
「そうだったよね」
妖怪達はすぐにこのことを突っ込んだ。
「それで戦争中って」
「何でそこで?」
「蓄えておったのじゃよ」
博士はあったその理由も話した。
「まだな。あったのじゃ」
「ああ、それでなんだ」
「そういうことだったんだ」
「戦争の後はそれもなくなった」
博士の言葉はこのことにも残念に思うものだった。
「それでも話はしたぞ」
「この人とね」
「そうだったんだ」
「二人でよくな」
博士もまた二人と言った。
「話した」
「二人でなんだ」
「よく話したんだ」
「それで食べたんだ」
妖怪達はこうも話してみせた。
「二人で」
「二人。まあ誰かと一緒じゃな」
博士はこう話した。
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