第四十一話 暗黒その十六
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「決してな」
「そうか、あるのか」
「ある」
今度は断言だった。そうしてだった。
「来い」
「来いだと」
「そうだ。来い」
こう言うのだった。
「来るのだ」
「私への言葉ではないな」
死神は彼の口調からそれを悟った。
「そうだな」
「如何にも」
そしてその通りだと。髑髏天使も言った。
「来るのはだ」
「何だ、それは」
「何かしら」
死神だけでなく妖魔も問うてきた。
「それは」
「これだ」
返答は一言だった。
そしてだ。彼のあのサイドカーがである。ひとりでに来たのだ。そのうえで妖魔に対して全速力で向かって来たのである。
「あれは」
「貴様のサイドカーか」
「そうだ」
まさにそうだというのだった。
「炎も氷も防ぐがだ」
「それはどうかというのね」
「この衝撃はどうだ」
妖魔を見据えての言葉である。
「耐えられるか」
「充分よ」
妖魔の言葉はここでも笑っている。
「言わせてもらうけれどね」
「充分か」
「見なさい」
突進してくるそのサイドカーを見ようともしない。そして。
またあの糸が盾を作った。それでだった。
サイドカーは動きを止められた。また金属音がする。
「こういうことよ」
そして妖魔の勝ち誇った声も来た。
「これでわかったかしら」
「よくな」
だが。髑髏天使の言葉は冷静なものだった。
「やはりそうなるか」
「予想していたとでもいうのかしら」
「その通りだ」
まさにそうだと返してみせた。
「そういうことだ」
「言うわね。けれどこれではっきりとしたわね」
「何がだ?」
「貴方達は私に傷をつけられない」
このことを彼等に告げてみせる妖魔だった。
「私のこの盾がある限りね」
「そうだな。貴様の盾はだ」
道路天使の今の言葉は防がれた者のものとは思えない落ち着きがあった。その落ち着きを隠さないままの言葉であった。
「確かに強い」
「その通りね」
「どんな矛も通さないな」
「矛盾ね」
韓非子にある話だ。所謂最強の矛と盾の話だ。どちらも両立せず話が合わないということがそのまま言葉として残っているのだ。
「私にはどんな矛も通じないわよ」
「確かにな。だが」
「だが?」
「あくまでそれは盾があるならばだ」
こう妖魔に対して告げるのだった。
「その場合はだ」
「それは一体どういう意味かしら」
妖魔は髑髏天使の今の言葉に問い返した。
「わからないけれど」
「安心しろ、わからせてやる」
髑髏天使の言葉はここでも冷静なものだった。
そしてだ。その彼の前にサイドカーが戻ってきた。主がおらずとも底に主がいるように。流れるように前に来たのである。
「これからな」
「これからね」
「そういうことだ
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