第四十一話 暗黒その十三
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「私もいるのだ」
「来るのね」
「こうしてだ」
突進しながらだった。右に左に分身を出していく。そうして。
その分身達が一斉に鎌を投げる。それで切り裂かんとする。
しかしその鎌達に対してもだ。妖魔は悠然と言うのだった。
「生憎だけれどね」
「どうして防ぐ」
「こうしてよ」
こう言ってであった。すぐにだった。
またあの白い糸が出て来て盾になる。それによってだった。
鎌を全て防いだ。まさに絶対の障壁だった。金属と金属がぶつかり合う音がした。
「見たわね」
「見たくはなかったがな」
「けれど見たわね」
「確かにな。私の鎌を防いだ」
彼は突進を止めていた。分身もだ。そのうえでの言葉だった。
「見事だと言っておこう」
「お世辞ではないわね」
「それを言う趣味はない」
死神は表情を変えずに言葉を返した。
「それはな」
「そうね。そうした顔をしているわね」
「私は事実だけを言う」
鋭い目になっての言葉だ。
「事実だけをだ」
「そしてその事実は」
「貴様は強い」
これを紛れもない事実だというのである。
「確かな強さだ」
「そうよ。貴方達を二人共ここで倒すのだからね」
「それだけの強さがあるか」
髑髏天使もまたここで言ってきた。
「そういうことだな」
「その通りよ。それじゃあだけれど」
「今度は守るだけではないか」
「守るだけでは勝てはしないわ」
笑っている声だった。悠然とだ。その声で髑髏天使に応えていた。
「そうでしょ」
「その通りだ。それでか」
「私の攻めを見せてあげるわ」
言葉と共にであった。彼女の周りに無数の黒蜘蛛達が出て来た。
「蜘蛛か」
「小さいな」
「私の可愛い僕達」
妖魔は動かない。声だけを出してきていた。
「この子達が相手をするわ」
「只の蜘蛛ではないな」
髑髏天使はすぐにこのことを見抜いた。
「そうだな」
「当然よ。私は妖魔よ」
妖魔の声はここでも笑っていた。
「その私が只の蜘蛛を操る筈がないわね」
「では。子供か」
死神が察したのだった。
「若しくは分け身の一つか」
「分け身よ」
妖魔の返答はこれだった。
「それよ」
「貴様自身だというのか」
「その通り。この子達は私自身」
こう死神にも髑髏天使にも話す。
「この子達が見るものはそのまま私も見るし聴くものも聴こえるのよ」
「そしてそのうえでか」
妖魔の周りを囲むその無数の子蜘蛛達を見てだ。髑髏天使は言う。
「攻撃を仕掛けてくるのか」
「小さいけれど私自身」
妖魔の言葉は続く。
「それはわかっておくことね」
「話は聞いた」
髑髏天使は言葉を返した。しかし臆するところはなかった。
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