第四十一話 暗黒その十一
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それは蜘蛛だった。禍々しいまでに巨大で漆黒の姿をした。その蜘蛛であった。
「蜘蛛か」
「アトラク=ナクア」
男は言った。
「それがこの妖魔の名だ」
「アトラク=ナクアか」
「古代より糸をつぬぎ獲物を喰らってきた闇の蜘蛛だ」
その妖魔についても話された。
「それが今の貴様等の相手だ」
「そうか、よくわかった」
牧村は男のその言葉を受けて頷いてみせた。
「この闘いで俺に倒される相手のことはだ」
「倒せるかな」
男は牧村のその言葉に思わせぶりな口調で返してみせた。
「果たして」
「倒す」
可能の言葉ではなかった。
「必ずだ」
「断言したな」
「既に決まっていることだ。だからだ」
「それでか」
「そうだ。俺は倒す」
牧村はまた言ってみせた。
「その妖魔をだ」
「私もだ」
死神もまた、だった。男に対して言ってみせた。
「その妖魔を倒そう」
「いいだろう。それではだ」
「行くぞ」
「それでいいな」
二人は今度は同時に男に告げた。
「今から闘いだ」
「そして倒す」
「よかろう。ならばだ」
男もその言葉を受けてだ。静かに応えてみせた。
そしてそのうえで。その姿を闇の中に消していった。
声だけが聞こえる。男の声はこう二人に告げた。
「私が何故今一人だけ呼んだかだ」
「どうしてだ、それは」
「強いからだ」
これがその声の言葉だった。
「だからだ」
「強いか」
「そうだ、強い」
また言うのだった。
「先の妖魔達よりもだ」
「我々二人を同時に相手にできるだけか」
「如何にも」
そうだと。また死神にも返してみせていた。
「それはすぐにわかる」
「ならばだ」
牧村はその言葉を聞いても臆してはいなかった。
構えは取っていない。しかし闘う目になってだ。声に返すのだった。
「見せてもらおう、その強さ」
「そうだな。それではだ」
死神もだった。牧村に続く。
そのうえでだ。二人はそれぞれ構えに入った。牧村の両手が拳になり己の胸の前にいく。死神もまた右手を拳にして。そのうえで己の胸の前にやった。
拳と拳が打ち合わされそこから白い光が放たれる。拳が胸の前に置かれたその時に青白い光が放たれた。そうしてそのそれぞれの光の中で。
髑髏天使となり闘う姿となった。髑髏天使が右手を少し前に出してあらためて握り締めた。
「行くぞ」
「刈ろう」
死神は右手の大鎌を一閃させた。これが名乗りだった。
男の気配は消えていた。そうして。
妖魔がだ。彼等に対して声をかけてきた。
「いいかしら」
「女か」
「そうよ」
こう髑髏天使に答えるのだった。
「その通りよ」
「妖魔にも男や女があるのか」
「そうした意味では同じよ」
こんなこと
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