第四十一話 暗黒その十
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「別にな」
「ならいいな」
「そうだな。しかしだ」
「しかし?」
「貴様が出て来たということはだ」
牧村が今言うのはこのことだった。
「またか」
「そうだ、まただ」
彼もまたこう返してきた。
「まただ」
「そうか、またか」
「いいな、それで」
死神に顔は向けない。しかし言葉は向けてきていた。
「行くぞ」
「相手は何処にいる」
「暫く進むのだな」
「暫くか」
「そうすれば出て来る」
これが死神の今の言葉だった。
「そうすればだ」
「ではここか」
「そうだ。見るのだ」
気付けば二人の他にハイウェイにいる者はいなかった。何時の間にか道にいるのは二人だけという異様な状況になっていたのである。
「いるな」
「あの男か」
「そうだ、これでわかったな」
「確かにな」
牧村は死神のその言葉に頷いた。
「よくな」
「ならいいな」
「ああ、それではだ」
「行くぞ」
そうしてだった。さらに前に進むとだ。あの男が道の中央に立っていた。
左右からのライトがそのまま彼を照らしていた。それを背にしてだ。漆黒の姿を闇夜の中に映し出していた。
牧村と死神はそれぞれバイクを止めた。男の少し前だった。
「来たか」
「誘い出されたというのか」
牧村は男のその言葉に返しながらヘルメットを脱いだ。
「この場合は」
「そうかもな。私は御前達をここに招き寄せた」
「やはりな」
「今ここには誰もいない」
男はまた二人に告げてきた。
「いるのは私達だけだ」
「闘うのにはおあつらえ向きということだな」
「如何にも」
男は牧村のその言葉に声だけで頷いてみせてきた。
「そういうことだ」
「そうか。それならだ」
「来い」
男からの言葉だ。
「既に妖魔は呼んでいる」
「また二人か」
死神はもうヘルメットを脱いでいた。そのうえで男に対して告げた。
「妖魔の数は」
「いや、一人だ」
男はここでは死神の言葉を否定した。
「今回は一人だ」
「一人か」
「不服なら別の妖魔も呼ぶが」
「いや、いい」
死神はそれはいいとした。今の言葉には感情は見られなかった。
「それならそれでいい」
「そう言うか」
「そしてだ。その妖魔だが」
死神は自分から話を変えてみせた。
「何だ」
「来るのだ」
男の今度の言葉はだ。二人に向けたものではなかった。
身体を一切動かさずに言うとだった。そこに来た。
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