第四十一話 暗黒その七
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「それは」
「だから何があってもね」
「運に助けられますよね」
「もっと言うとね」
若奈は明るい顔で言葉を続けてみせた。
「あれよ。死神がスポンサーについてるようなものね」
「死神!?」
その名前を聞いてだ。牧村は思わず問うた。
「死神がか」
「運がいいってそういうことになるんじゃないかしら」
若奈は特に考えることなく述べた。
「やっぱり」
「そういうものか」
「極論すればね」
そうだと牧村に話すのだった。
「運がよかったら死ぬような状況でも死なないし」
「死なないか」
「生きることだってあるじゃない」
また言うのであった。
「そうじゃないかしら」
「運、か」
「だから運って大きいから」
言葉が繰り返しになっていたがそれでも言う若奈だった。
「牧村君は運がいいわ。それは間違いないわ」
「そうか」
「悪運よね」
それだというのは未久だった。
「お兄ちゃんはね」
「悪運か」
「まあ本当に死神がスポンサーについてるならそれでいいじゃない」
彼女もまた特に考えることなく述べていた。
「助かるんならね」
「死神か」
「別に悪い神様でもないんでしょ?」
その言葉は実にあっけらかんとしていた。
「人間絶対に一度は死ぬんだし」
「死神はお迎えでしかないのよね」
若奈もそう考えていた。死や死神についてはだ。
「やっぱり」
「ですよね、だからやっぱり」
「死神は悪い神様じゃないですね」
未久の考えはこれで決まっていた。
「そうなると」
「そうよね。まあもっともね」
若奈は笑いながら話した。
「死神が本当にいたら怖いけれどね」
「ましてや目の前に出て来たらですよね」
「怖いと思うわ」
こう未久に話すのだった。
「やっぱりね」
「ですよね。まあ死神なんてね」
「いないし」
二人は死神の存在は信じていなかった。それも全く。
「そうした存在ってね」
「妖怪とか魔物とかいませんよね」
「絶対にね」
「さてな」
明るく話す二人にだ。牧村は言ってみせたのだった。
「それはどうかな」
「どうかなって」
「どうしたのよ、急に」
若奈と未久は彼のその言葉に目を少し丸くして問い返した。
「何かそうしたのが本当にいるみたいな」
「そんな口調だけれど」
「いや」
しかしだった。牧村はここで己の言葉を引っ込めた。その時に己の感情も抑えてだ。そうしてそのうえであらためて二人に対して告げた。
「何でもない」
「何でもないの」
「そうだっていうの?」
「そうだ、何でもない」
また言うのだった。
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