第四十一話 暗黒その四
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「金メダル取れるかも」
「狙ってみたら?」
未久はここまで聞いてから兄に告げた。
「一回本気で」
「メダルか」
「そうよ。狙ってみたら?」
兄に再度告げる。
「それもね」
「俺はそうしたことには興味はないがな」
「一生食べていけるよ」
即物的な言葉だった。
「それでも駄目?」
「何故そこで食べる話が出る」
「だって人間食べないと生きられないじゃない」
やはり即物的な主張である。
「だからね」
「それでか」
「そうよ。そもそも将来どうするのよ」
「ああ、それは大丈夫なのよ」
だがここで若奈が話してきた。
「それはね」
「もう決まってるんですか、就職先が」
「大学に残るみたいよ」
そうだというのいうである。
「大学にね。それでそのまま先生になるみたいよ」
「お兄ちゃんが大学の先生ですか」
「助手から助教授になって」
具体的な言葉である。とはいってもまだ未久にはわからないところもある話であった。
「それで最後は教授にね」
「お兄ちゃんが教授」
あまりわからないがこれには驚いた顔になった。
「教授にですか」
「おかしい?」
「何かイメージと違います」
怪訝な顔での言葉であった。
「お兄ちゃんのイメージじゃ」
「まあそうかもね」
若奈もそれは否定しなかった。
「どっちかっていうと体育の先生よね」
「本当にどっちかっていうとそんな感じですけれど」
「それでもね」
「何か決まってるんですか」
「うちの大学に百歳を超えてる教授の人がいて」
あの悪魔博士のことである。若奈も実はその本名を知らない。本名ははっきり言われているのだが誰もそれで話すことはないのである。
「その人の後継者に考えられてるみたいなのよ」
「百歳を超えてるんですか!?」
「百十歳だったかしら」
年齢も実際のところよくは知らなかった。
「どうだったかしら」
「仙人みたいな人ですか?」
「まあそうね」
若奈は未久のその言葉に頷いた。
「そんな感じの人なの」
「仙人ですか」
「そうよ、凄いから」
また話すのだった。
「戦前からうちの大学におられるのよ」
「戦前って」
「昭和よりも前だったかしら」
言いながら首を少し傾げさせもした。
「どうだったかしら、それは」
「それで今も教えてるんですか?」
「そうよ、物凄く元気よ」
「普通死ぬんじゃ」
「一説によると不死身らしいし」
若奈はこんなことも話した。
「今四十位の図書館の人に聞いたらね」
「はい」
八条大学の図書館に勤務しているという意味である。
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