第四十話 漆黒その十八
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そのうえでだ。また問うのだった。
「牡蠣か海老か」
「両方共よ」
祖母が答えた。
「どちらもあるわよ」
「そうか、両方か」
「うむ、たらふく食べるといい」
今度は祖父が言ってきた。
「好きなだけな」
「有り難い、それではな」
「お味噌汁もあるわよ」
それもあるというのだった。
「菊菜のおひたしもあるし」
「味噌汁は大根のものだ」
祖父も言ってきた。
「さあ、食べましょう」
「三人でな」
「三人か」
あらためてだった。この言葉に家族の絆も感じたのだった。
「そうか。俺は一人ではない」
「おやおや、何時一人になったんだい?」
「そんなことはない筈だがな」
祖父母の顔がここでは笑みになった。
「だから食べましょう」
「一人で食べても美味くはない」
祖父はこんなことも言ってきた。
「皆で食べてこそだ」
「そうだな。一人で食べる飯は美味さが限られている」
牧村もこう話した。
「しかし家族で食べればだ」
「美味しいでしょ」
「そういうことよ」
「そうだな。それではな」
「食べましょう」
「行くぞ、三人で」
「ああ」
祖父母の言葉に頷く。ちゃぶ台のある居間に向かった。するとそこにはもうそのフライや味噌汁、それに野菜にお椀も置かれていた。
それを見てだった。牧村はまた言った。
「美味そうだな」
「だから腕によりをかけてるから」
「しかも家族で食べるからな」
それも当然だというのであった。
「さあ、それなら」
「いいな」
「食べるか」
三人で食卓につく。いただきますの後で食べる。すると。
「美味いな」
「そうでしょ?美味しいでしょ」
「さあ、どんどん食べろ」
祖父母がまた笑顔で声をかけてきた。
「あんたは私達の孫だからね」
「遠慮することはないぞ」
「遠慮もか」
それを聞いてだった。牧村はまた言った。
「いらないのか」
「だから他人じゃないのよ」
「それでどうしている、遠慮が」
「そういうことになるか」
「わかったら食べなさい」
「いいな」
祖父母の声がここでも温かい。
「スイカもあるし」
「それもな」
「有り難う」
牧村は珍しくだ。この言葉を出したのであった。
「それではな」
「皆で食べましょう」
「家族でな」
こう話してであった。三人で楽しく仲良く食べた。彼にとっては祖父母もかけがえのない家族だった。このことをよくわかった時であった。
第四十話 完
2010・6・27
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