第四十話 漆黒その十六
[8]前話 [2]次話
「そうなっていた」
「そうか」
「驚かないのか」
「俺は取り込まれなかった」
その事実を淡々と語るのだった。
「それならばな」
「少なくとも取り込まれないだけのものは身に着けたな」
「如何にも」
また答えた髑髏天使だった。
「それならばそれで終わりだ」
「しかし。貴様はまた強くなったな」
死神はここで話を変えてきた。
「実にな。特に」
「特にか」
「心がだ」
その心を指摘するのだった。
「強くなったな」
「大阪での鍛錬の結果だな」
「間違いなくな。だからこそ闇にも取り込まれなかった」
その理由も話した。
「いいことだ。だが」
「だが?」
「心はそのまま強くなればいい。後は腕だ」
「戦いの腕か」
「妖魔は強い。そして禍々しい」
「魔物の様に強いだけではないか」
「禍々しさもある。それが大きいのだ」
こう話すのだった。
「それも忘れるな」
「感じ取った。ならば忘れない」
また答えた髑髏天使だった。
「そういうことだ」
「そうか。ではだ」
死神はまた話を変えてきた。
「これで終わりだが」
「変身を解くか」
「闘いはもうない。ならばな」
「よし、わかった」
ここまで聞いてであった。髑髏天使も頷いてみせた。
そのうえで死神と共に降り立ちだ。牧村に戻った。
死神も黒のジーンズとタンクトップになる。夏らしいラフな格好だ。
しかしその格好でもだ。彼は言うのだった。
「暑苦しい服か」
「黒だからな」
牧村はその服の色から述べた。
「どうしてもそう見えるな」
「そうか」
「黒が好きなようだな」
「黒は死の色だ」
死神のここでの返答はこれだった。
「だからだ」
「そうか。だからか」
「だから私は黒を愛する」
「色としてか」
「戦う時の白も悪くない。だが黒は普段から好きだ」
「そういうことか」
「そういうことだ。ではこれからだが」
死神は街の方に目をやっていた。
「街を楽しむとしよう」
「街をか」
「大阪の街は飽きない。実にいい」
彼は言った。
「いるだけで面白さを感じる街だ」
「だからこそか」
「少し見回る。何か食べるのも悪くはない」
「ならその辺りの店に入ってみるといい」
牧村は食べることについてはこう勧めた。
「どの店でも普通に楽しめる」
「味をか」
「この街は特別だ。何を食べても美味い」
「成程な。それはいい街だ」
「好きなものを好きなだけ食べるといい。それではだ」
ここまで話してだ。牧村は踵を返した。
「俺はこれでだ」
「帰るか」
「屋敷に帰りまた修行だ」
死神に踵を返した。そのうえでの言葉だった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ