第四十話 漆黒その四
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「多いのは当たり前じゃ」
「じゃあ巨人ファンは?」
「いないの?」
「堂々と名乗れば命がないぞ」
これもまた大阪であった。
「関西で巨人ファンの人権はないぞ」
「本当にないんだね、それは」
「完全に」
「そうじゃ、ない」
まさにその通りだというのであった。
「試しに巨人グッズを来て大阪の街を歩いてみるのじゃ」
「死ぬね」
「殺されるね」
「南港に浮かぶね」
妖怪達もすぐに答えた。
「大阪でそんなことしたら」
「地獄に落ちるよね」
「僕達でもできないよ」
「死ぬに決まってるから」
「それが答えじゃ」
博士は冷静に述べた。
「巨人はここでは死の単語じゃ」
「甲子園でも凄いからね」
「一塁側だけじゃなくて甲子園全体が揺れるからね」
「もう壮絶にね」
阪神ファンのその熱狂ぶりはまさに日本一である。ファンをしてこうたらしめるというのが阪神という球団が持っている魅力なのだろう。
「恐ろしいからねえ」
「何かが違うっていうかね」
「全く」
「大阪はその本場だし」
阪神ファンの、という意味である。
「神戸も阪神ファンだけれど大阪はもっと熱いよね」
「っていうか阪神と一体化してない?」
「だよねえ」
「大阪で阪神を馬鹿にしてはならんのじゃ」
博士はまた言った。
「けなして褒めるのはいいのじゃ」
「それはいいんだ」
「けなすのはいいんだ」
「阪神は何をやっても絵になる球団じゃ」
博士の今度の言葉はこれだった。
「どんな勝ち方をしてもどんな負け方をしてもじゃ」
「どんな負け方って」
「勝つだけじゃなくて」
「そうじゃ。絵になる」
博士はまた言った。
「それが阪神なのじゃよ」
「褒めてるんだよね、それって」
「負けて絵になるって」
「負けだけではない」
博士の言葉はさらに続くのだった。
「お家騒動やそういったものまで絵になる」
「ううん、確かに」
「何故か納得できるし」
「だよねえ」
「阪神だけはね」
妖怪達は結果として博士のその言葉に頷いてしまった。
「何故かどんなことでも不思議とね」
「絵になるよね」
「何でかな」
「訳がわからないよね」
「阪神だからじゃ」
博士の返答である。
「阪神だからじゃ」
「阪神だから絵になる」
「そういうことなんだね」
「つまりは」
「そうじゃ。阪神は何をしても絵になるのじゃ」
このことも再度言うのであった。
「それが阪神なのじゃよ」
「そうだな」
牧村も博士のその言葉に頷いてきた。
「逆に巨人はだ」
「負けないと駄目じゃ」
「そうだ。巨人には無様な負けがよく似合う」
牧村は巨人が嫌いだ。だからこその言葉だった。
「実にな」
「そうじゃ。巨人の勝利は実に不愉快じゃ」
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