SAO編
四十四話 一人
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「ん…………」
ゆっくりと、リョウは瞼を開ける。時刻は既に深夜であり、リョウとサチが眠る寝室にも、明かりは付いていない。
あの後、キリト、アスナの結婚お祝いパーティーと称して、四人で出てきた大量の料理を飲み食いした後、キリトとアスナを返し、片付けを終え、サチは久しぶりに長話や大規模な料理を作ったせいか倒れるように眠り、リョウもそれに続いた。
「ったく、気持ちよさそうに眠りやがって……」
リョウは隣に眠るサチの顔を見て、微笑みながら呟く。
黒猫団の事件後数週間、リョウは、常にサチの隣で寝ていた。
仲間を失った哀しみもそうだが、何よりも一度死にかけると言う経験をした恐怖は、サチの心に大きな傷を負わせ、睡眠をまたしても困難にしてしまっていたのだ。
そのため、その数週間の間、リョウはサチの隣で横になり、胸に抱き付いたまま泣きじゃくるサチが泣き疲れて眠るまで、ずっとそばに居続けたのである。
「(すぅ……すぅ……)」
それがどうだろう?今、静かな寝息を立てるのサチには、そんな過去があったとは到底思えないほどの安らかな寝顔が浮かんでいた。
その無防備な顔を見ているうち、リョウの中に、先程の買い出しの帰りにキリトが言った一言が思い出される。
『あんな近くに居るんだから気付けよな…………』
………………
「気付いてねぇ訳あるかよ…………馬鹿野郎」
はぁ。と息を吐いて、そう一言だけ呟いた。
元々は読めなかったサチの眼だが、半年以上も同居している内、自然と読めるようになっていた。
『まぁ、どっちにしたってずっと…………』
その先を思い浮かべることはせず、リョウは立ち上がり、リビングへと向かう。
音を立てないように(そもそもドアの向こうにはシステム的に音は届かないのだが)無縁ポットからホットティーを入れ、口に含みながら、窓から見える外周の星明かりを眺める。
夢を、見ていた。
先程までの眠りで、短くもはっきりと思いだせる夢を見ていた。
余りしょっちゅう見る夢ではないのだが、昔話をしたせいだろうか?久しぶりに、脳が記憶を呼び起こしたらしい。
「ふぅ…………」
悪夢か、良夢かと聞かれれば、一般的には悪夢に入るのだろうか?。
そんなどうでもいい事に思いを馳せつつ、リョウはおもむろに、自身の手元に、あるアイテムを出現させる。
名称《戒めの腕輪》
名前に反して、雪のように真っ白な光沢を放つ腕輪で、普段リョウはこの腕輪を、浴衣のおかげで誰の眼にも付かない、右腕に装着している。
それは、このアイテムがある意味でゲームバランスを壊しかねない効果を秘めているからだ。
この腕輪は装着者の経験値を、《自身がキルしたプレイヤー数×0,1%》プラスすると言うこの世界で
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